2011年9月30日金曜日

Bosch研究所:パーソナルロボットを一般家庭へ

海外技術動向
http://multivu.prnewswire.com/mnr/robertbosch/47999/
 米国の家庭では日常的に発生する様々な家事を助けてくれる人或いはロボットが求められている。それに答えるのがBoschが開発中のパーソナルロボット(PR)Alanである。BoschのCEOは5から10年以内に生活支援ロボットが一般家庭に入るであろうと予測する。現在のロボットプロジェクト(PR2)では安全性確保や低コスト化のために必要なソフトウェアとセンサデバイスを開発中である。
ロボットには自立動作を求めるが、不足するところは、人の指示で動作するリモートコントロール機能も付け加える。
 パーソナルロボットには様々なセンサデバイスが必要になってくる。Boschは既に車載用のセンサ技術を保有する。ジャイロセンサ、力覚センサ、圧力センサ等々これらはパーソナルロボットにも応用される。ロボットでは車載と同様高性能、高信頼性を低価格で実現する必要があり、これにはMEMS技術を応用する。また自動校正のためのアルゴリズムも重要である。
 

スマートフォン用超小型マルチ有毒ガスセンサ米国で開発(Synkera Technologies社、米国立研究機関)

海外技術動向
http://www.foxnews.com/scitech/2011/09/28/cell-phones-take-on-silent-killers/
 今日人間は様々な場所で有毒ガス(Silent killer)にさらされる危険がある。火災、ガス漏れの他、有毒ガスが用いられる職場、公共空間でのテロリストによる毒ガス攻撃等々。これらを予知するための有毒ガスセンサはすでに実用化されており、必要に応じて建物に設置されたり、ポータブルガス検出器が備えられたりしている。このたび米国立研究機関やSynkera Technologies社が携帯電話に内蔵できる超小型マルチ有毒ガスセンサを開発した。
 それが活躍する場面は、例えばホテルで寝ている時、火災、ガス漏れ等により一酸化炭素ガス(CO、無臭)が部屋に侵入してくると、携帯電話が警報を発して人を起こすと同時に、消防署へ通報する。
 検出できるガスはCOの他、メタン、シアン系、トルエン、サリン等々があり、日常生活で出会う可能性のある毒性ガスからテロリストによる化学アタックまで、あらゆる場面で起こる危険を察知することができる。
 現在サンプル試作段階にあり、まもなくこのような超小型毒性ガスセンサを搭載した携帯電話が発売されるであろう。
           シリコンベースマルチガスセンサ(含64ナノセンサ)、大きさ 1cm角以下

0.1ミリのカプセル量産技術開発、薬剤入り、DDSに応用(東大)

20110930日経産業新聞11
 薬物送達システム(DDS)の実現につながる、薬剤を詰めた微小カプセルを大量生産する技術を東京大学竹内昌治准教授らが開発した。直径0.1ミリのガラス管を試験管内に組み込み、ガラス管にアルギン酸水溶液を、試験官にカルシウム溶液を詰め、試験官を振り回すとガラス管から垂れたアルギン酸水溶液がカルシウム溶液と反応してゼリー状のカプセルができる。アルギン酸水溶液に治療薬を混ぜれば、治療薬入りの微小カプセルを量産できる。ガラス管を工夫するとカプセル内部を6つの隙間に仕切れ、異なる液を入れることができる。これまでゼリー状の微小カプセルを作るには、スポイトを使って溶液同士を反応させており、量産には適さなかった。

2011年9月29日木曜日

MEMSセンサー、ファウンドリー試作サービス(大日本印刷)

20110512 電波新聞 16

 大日本印刷は自社製品を持たない中立ファウンドリーとして事業を展開している。MEMSセンサーとして、加速度センサー、ジャイロセンサー、圧力センサーの試作実績を有している。同社はセンサーチップを半完成品として顧客に提供し、顧客がICや他のセンサーと共にパッケージ実装し、製品としての販売を前提としている。3軸加速度センサー用のパッケージは可動部への影響からセラミックパッケージが主となっているが、価格の低下からプラスチックモールドパッケージ化が望まれており、対応技術を開発した。

各種センサーの最新技術(北陸電気工業)

20110512 電波新聞 14-15

 北陸電気工業はMEMS技術をコアに圧力センサー、3軸加速度センサー、フォースセンサー等をラインアップし、各分野への展開を図っている。圧力センサーは、ピエゾ抵抗効果を応用したもので、シリコンチップの中央部にダイヤフラムを形成し、そのうえに構築した4つのピエゾ抵抗により、圧力を電気信号に変換している。センサー素子に増幅回路や温度補償回路を付加した圧力センサーモジュールも製品化している。3軸加速度センサーは高精度化、低消費電力化に向かっており、12ビット出力の高分解能タイプを製品化した。フォースセンサーは微小荷重をリニアに計測でき、タッチパネルへの応用を展開している。

新顕微鏡、大気・水中でもナノ物質観察(島津製作所)

20110512 日経産業新聞 1

 走査型プローブ顕微鏡の新製品として、大気や水中でも観察できる製品を島津製作所が開発・発売する。従来は真空中で観察という制約があったが、検出回路設計を工夫して実現した。同顕微鏡は微小な探針が物質の表面をなぞり、探針の振れの周波数をレーザーで検知し、この解析により原子・分子の形状や性質を観察する。ノイズの低減や探針のズレ補正等により検出感度を67倍に向上し、真空環境も不要なことから1/51/3の省スペースにもなった。

 プローブ顕微鏡の世界市場は年100億~150億円程度と言われ、中長期的に拡大の見通し。国内メーカーはシェア4割の島津製作所以外は一部にとどまる。

MEMSセンサー、水晶をウエハーとして利用

20110512 電波新聞 9

 センサーの加工技術としてMEMS技術が注目されている。3軸加速度センサー、ジャイロセンサー、圧力センサー、フォースセンサー等の新製品が活発化している。MEMS技術で使用されるウエハーとして、シリコンに加えて水晶が注目されている。水晶が素材として高精度なセンサー開発に重要な役割を果たしており、今後の新製品開発が目指されている。

2011年9月27日火曜日

MEMS技術応用サーモパイル3タイプ10月出荷(浜松ホトニクス)

20110927電波新聞4
 MEMS技術とCMOS回路技術を応用したサーモパイル(熱電推)の新製品を浜松フォトニクスが出荷する。2波長を検出するデュアルタイプ、受光素子を直線状に並べたリニアタイプ、面状に並べたアリアタイプの3タイプで、ガス分析や温度計測、人体検知などが用途。シリコン系材料の使用により高感度で高信頼性を、MEMS技術で幅広い製品ラインアップを、CMOS回路技術により高付加価値で低コストを実現した。

2011年9月26日月曜日

振動を電力に変換、センサー端末試作(NTTマイクロ研)

20110926日刊工業新聞15
 微小な振動で発電する技術をNTTマイクロシステムインテグレーション研究所が開発した。電子回路は従来技術に比べて約600分の一に相当する0.7ナノワットの低消費電力で動作する。この技術を利用し、振動素子と電子回路を組み合わせ、自律的に動作するセンサー端末を試作した。端末の大きさは現在3㎝角だが、今後ミリメートルサイズに小型化し、爪の先や衣服のボタンに貼り付けられるようにする。振動素子はバネで支持された可動体と固定電極で構成し、振動により可動体と固定電極の間の電気容量が変化すると容量素子に電荷がたまり、電圧が増大して振動の大きさが検出できる。

2011年9月22日木曜日

Baolab Microsystems(スペイン):CMOS一体型3軸電子コンパス開発

海外技術動向
http://www.baolab.com/pressreleases/baolab_3d_compass_july_2011.htm
 Baolab社は2003年にスペインで設立されたMEMSモーションセンサのベンチャー企業である。NanoEMSと名付けたCMOS/MEMS一体化プロセス技術を得意としている。CMOS一体型を設計する場合、CMOS形成後、最終工程でMEMS部を作製するケースが多いのに対し、NanoEMSではCMOSの途中工程でMEMS部を形成し、最終保護膜でシールすることを特徴とする。

 Baolabは、NanoEMSプロセスを用いて、超低コストCMOS一体型3軸電子コンパスを開発した。
感度、消費電力等の基本性能は従来品と同等だが、低コストプロセスで製造できることと自動補正機能を追加したのが特徴である。電子コンパスの低価格化が進み、今や50セントを切るところまで下がってきたが、NanoEMSプロセスを用いることによって、その価格でも十分利益が得られる見通しを得た。
 センシング方式は、ローレンツ力の原理を応用して磁場をセンシングしている。ばねで支持された可動アルミプレートをCMOS内部に形成する。プレートに電流を流すと地磁気によって力が発生し、磁場の方向に応じて変位する。変位は容量の変化で検出し、3軸方向の変位を捉えられるよう設計されている。従来のホール効果によるセンサは1軸方向しか捉えられなかったし、感度を上げるため磁性材料薄膜を形成する必要があった。これらはすべて高コストプロセスにつながる。またローレンツ方式はホール効果より消費電力が少ないというメリットもある。しかもNanoEMSプロセスを応用することによって、センシング部をCMOSの中に組み込み、超小型化も達成した。
 本デバイスは2012年から発売予定である。
 
 

ヒト生体内の毛細管形成、流体チップで再現(慶応大)

20110922日刊工業新聞23
 慶應義塾大学の谷下一夫教授や須藤亮専任講師らは、生体内部で毛細血管が作られる様子を流体チップ内で再現した。シリコン製の流体チップは、内部に二つの通り道があり、この間をコラーゲンゲルで仕切っている。一方の道に人由来の血管内皮細胞、もう一方に人由来の間葉系幹細胞を満たし、血管内皮細胞がコラーゲンゲルを溶かしながら間葉系幹細胞に進み、直径1020マイクロメートルの内部が空洞の血管を形成するのを観察した。再生医療により臓器を作る研究が進んでいるが、組織内部に血管が通っていないと機能しない。血管を作るメカニズムを明らかにし、人工臓器開発につなげるのを目指す。

2011年9月20日火曜日

センサーモジュール、6種類の検知に対応(STマイクロ)


20110920日経産業新聞4
 STマイクロエレクトロニクスは、加速度とジャイロセンサーを組み込み、リニア加速度、回転や時期など6種類の項目を検知できるマルチセンサーモジュールの新製品を開発した。従来製品に比べてパッケージサイズを半減し、小型電子機器での採用を見込んでいる。サンプル価格は3.2ドル。

2011年9月16日金曜日

MIT:新構造MEMS振動発電素子開発、発電量従来素子の100倍達成

海外技術動向
http://www.physorg.com/news/2011-09-rattle-power-mems-device-energy.html
 MITは新たに低周波振動でも発電するマイクロ振動発電素子を開発し、素子面積当たりで従来素子の100倍の発電量を達成した。
 ワイヤレスセンサ用の電源用としてエネルギーハーベスタの研究が盛んに行われている。回路の低消費電力化が進んだものの、これまで開発されたハーベスタでは出力が不足している。振動型発電素子に関してこれまで開発された構造は、圧電型、静電型があり両者とも出力は最高で数百μWレベルであった。圧電型の代表的な構造はMEMSでSi振動子を作製して、振動部に圧電体を形成する方法が主流である。このような構造の特徴として素子が受ける外部からの振動と共振周波数が一致した時に高い出力が得られるが、共振周波数から外れると出力が大きく低下するという問題があった。MITが開発した新構造素子は、同じ圧電型だが低周波数領域で発電することと、発電する周波数帯域が広いという特徴を有し、出力45mWを達成した。
 構造の特徴は、圧電体自身で振動子を形成し、片持ち梁のカンチレバータイプでなく、両持ち梁構造を取る。今後は100mWを目指すが、これだけの出力がればネットワークセンサ用として十分な電力を供給できるであろう。
 なお本内容はAug. 23 online edition of Applied Physics Letters.で発表された。

 

DLCの大面積処理法、大気中で50cm四方成膜(慶大など)

20110916日刊工業新聞5
 慶應義塾大学の鈴木哲也教授と神奈川県産業技術センターは、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)を大気中で大面積に製膜する方法を確立した。基材を送り出すシステムを併用すれば数メートルの長さの基材を製膜することも可能となる。処理法は10キロ~20キロボルトの電流を流して電極と基材の間でプラズマを発生し、対象物を往復させてDLC膜を積層する。真空環境による一般技術に比べ100分の一程度のコスト削減が可能となる。DLCはダイヤモンドのように硬い炭素の膜で、耐摩耗性やガスバリアーに優れるという特性を持つ。

2011年9月9日金曜日

poLight社(米):MEMS自動焦点レンズ商品化でSVTC社(米ファンドリー)と提携

海外産業動向
http://www.i-micronews.com/news/poLight-selects-SVTC-Technologies-their-generation-actuator,7465.html
 poLight社はMEMS自動焦点レンズ(TLens)を開発した米国のベンチャーである。ガラスとポリマーの2層構造からなるレンズにピエゾ膜を形成して焦点を可変できるアクチュエータ機能を持たせている。これはウェハプロセスで製作可能であり、今回量産化を目指して、米国SVTC社と提携した。SVTCはプロセス開発から量産まで請け負うファンドリーで、これまでも多くのMEMSデバイスの量産化を請け負っている。
 Tlensは従来の電磁駆動方式と比較して、小型(3mm□チップ)、高速動作、低消費電力(1/2)、低価格を特徴としており、特に携帯電話内蔵カメラに適している。特に製造プロセスではんだリフロー工程を通すことを可能にしている。
 一方、SVTCは量産試作プロセス開発から参画して、量産も担当するため、Tlensの早期商品化に大きく寄与することが期待されている。

2011年9月5日月曜日

MEMS3軸ジャイロセンサー、世界最小3.5x3x1ミリ(STマイクロ)

20110905電波新聞3
 民生機器向けMEMSセンサーのトップメーカーであるSTマイクロエレクトロニクスは従来比半分サイズのMEMS3軸ジャイロセンサーを発売する。可聴帯域外の共振周波数により、センサー近傍のスピーカなどからのノイズや機械的振動の影響を受けない。シングルセンシング構造で三つの直交軸のモーション検知をおこなう。

世界最小の方位計測センサー(ヤマハ)

20110905日経産業新聞4
 方位計測に使う3軸地磁気センサーとして世界最小の製品をヤマハが開発した。3軸地磁気センサーはGPSやナビゲーションに不可欠な部品でスマートフォンなどに普及している。CMOS回路チップにセンサー素子を直接埋め込み、チップと素子をつなぐ配線が不要。

医療向けMEMS開発、高齢者増で需要拡大、半導体・電子部品メーカー

20110905日刊工業新聞10
 医療分野用MEMS事業が展開しつつある。STマイクロエレクトロニクスは糖尿病治療用のインスリンポンプをスイス社と開発中で、従来は10cm角以上だったポンプをMEMS技術を活用し3分の1程度に小型化した。2年後の量産化を目指す。同社は緑内障診断用のMEMS技術による圧力センサー内蔵の使い捨てコンタクトレンズを実用化している。パナソニックは血液流量を計測するマイクロポンプや血圧計測用の圧力センサーを医療機器向けにMEMS技術を実用化する。オムロンは病室の患者の有無を検知する温度センサーを開発中で、酸素濃縮装置向けに気体流量を計測センサーを量産済みである。米アナログデバイセズは聴診器向けにMEMSマイクを開発している。調査会社ヨール・デベロップメントによれば医療機器向けMEMS市場は15年に10年比3倍の41億ドルに達する見通し。

2011年9月2日金曜日

Bosch & Freescale :エアバッグ用センサモジュール共通化

海外技術動向
http://www.i-micronews.com/news/Bosch-Freescale-collaborate-joint-chipsets,7450.html
 BoschとFreescaleはともに自動車用半導体デバイスの最大手である。今回両社は自動車用エアバッグシステム(センサ&コントローラ)で世界的な需要増に対応できるよう、モジュールを共通化することに合意した。内容はFreescaleのマイクロコントローラとBoschのエアバッグセンサをベースに両者を組合わせて標準モジュールを設計する。これによって品質を確保しながら、ユーザへの納期を短縮化することができる。製品供給は2012年度第1四半期からの予定である。

2011年9月1日木曜日

チップ積層対応露光装置で反撃、微細化限界にらむ(キャノン)

20110901日経産業新聞7
 シリコン貫通電極(TSV)に対応した露光装置をキャノンが開発している。TSV向けでは深さを求められるが、キャノンは独自の光学系レンズを開発し、1マイクロから数十マイクロメートルの深さで穴の中に電極を形成する。半導体露光装置市場はオランダのASMLが世界シェア70%を握り、ニコン、キャノンが追いかけている。しかし、欧州勢が主導権を握った半導体微細化には限界が見えており、半導体メーカーは立体的に半導体チップを積層する製造装置の開発を進めている。キャノンはこの動きに対応するもの。

ジャイロセンサー、3軸で業界最小、表面積4割削減(STマイクロ)

20110901日経産業新聞7
 STマイクロエレクトロニクスは3軸で立体的な動きを検知するジャイロセンサーとしては業界最小の新製品を発表した。チップの体積を従来の17.6立方ミリメートルから10.5立方ミリメートルとした。精度向上のため情報機器のスピーカーからの音響ノイズや、基板から伝わる振動の影響を受けない周波数帯域を使用して検知する。温度変化耐性も高めマイナス40℃から85℃の範囲で利用できる。センサーパッケージの価格は3.95ドル。