2011年1月28日金曜日

STMicroelectronics社:2010年民生用MEMS売上No.1企業に

2011.1 海外産業動向
http://www.eeherald.com/section/news/nws201101272.html
 iSuppli社の調査によると2010年度の民生用MEMS企業別売上でSTMicroが第一位となった。STMicroの2010年の民生用MEMS売上は対前年比63%増の$353M(約300億円)になった。特に加速度センサとジャイロセンサが牽引した。ジャイロセンサのシェアは2009年1%だったのを2010年は30%に増大させている。最近、製造ラインを拡充させており、8インチラインでMEMSデバイスを150万個/日生産している。
 民生用MEMSの2010年の全体市場は対前年比27%増の$1.6B(約1400億円)で2014年には$3.7B(約3200億円)に成長し、MEMS全体の中でも最も大きな割合を占める見通しである。STMicroの責任者は言った。民生機器用のニーズがMEMSの改革を起こし、STMicroは5年前からそのニーズに沿った開発を進めてきて、これまでの成功に至った。STMicroはいち早くモーションセンサの小型、高精度化を進めてきた。またユーザニーズを深く掌握することと、タイミング良く製造能力の増強を行ってきたことも寄与した。今後は複数のセンサを一つのデバイスに集積化させる複合センサの開発に力を入れると語った。

Discera社:世界最高レベルのジッター性能を持つMEMS発振器開発

2011.1 海外技術動向
http://apnnews.com/2011/01/24/discera-ships-worlds-highest-performance-mems-oscillators-with-femtosecond-jitter-for-networking-server-storage-and-video-applications/
 Dicera社は水晶発振器を上回る基本性能を備えるMEMS発振器をネットワーク、サーバー、ストレージ、ビデオ製品向けに出荷を開始した。
 DiceraのCEOは言った。これまでMEMS発振器はプログラム性で水晶発振器を上回るが、通信で必要とされるジッター性能、周波数精度、雑音特性は劣るとされていた。今回開発したMEMS発信器はジッター性能が高性能水晶発振器を上回り、また同時に低消費電力、広い動作温度範囲、周波数精度を実現している。すでに通信システムに組み込んで優位性を確認している。価格もLVPECL出力型が1万個時、$3.8と低価格で実現していると語った。
 今回のMEMS発振器の開発は、基本性能面で水晶発振器を上回り、今後置き換えが加速する可能性を示したものである。

台湾TSMC、直径450ミリ大型ウエハー、13年にも試験生産

20010128 日本経済新聞 9
 世界最大のファウンドリーである台湾積体電路製造(TSMC)は、世界で初めて直径450㎜のウエハーを使う試験生産ラインを2013年に稼働すると発表した。2015年にも量産ラインを稼働する計画で、量産時の回路線幅は20㎚以下としている。

BEANSプロの成果、国際学会で7件採択

20110128 日刊工業新聞 30
 BEANSプロジェクトの成果がMEMS分野で最も権威のある学会「IEEE MEMS2011」(23-27日、メキシコ・カンクン)で7(口頭発表2件、ポスター発表5)採択された。採択率34%と厳しい状況で多くの論文が採択されたのは、テーマが注目されていること、成果の水準が高いことを示す。

次世代半導体製造、本命はEUV、大出力の光源、普及のカギ

20110128 日経産業新聞 4
 次世代半導体製造装置は回路線幅が10㎚台で、その本命はEUV(極紫外線)と言われているが、製造に至るにはハードルが高い。3大課題の一つがレジストで解像度と感度につきさらに改良が必要。二つ目がフォトマスクで、反射させるものを使うが、マスク自体の欠陥の検査技術が確立しておらず、ウエハーへの転写精度の保証ができない。三つ目が最大の課題で光源。大出力の光源が必要だが、現時点では量産レベルで安定した光源はない。EUVに移行は間違いなく、20年ごろに露光装置出荷台数の1/3EUVになるとみている。

2011年1月26日水曜日

プローブリソグラフィー、半導体の描画装置向け(東芝など)

20110126 日刊工業新聞 29面/20110126 日経産業新聞 9
 次世代半導体向けの微細パターン描画技術の一つである「プローブリソグラフィー」で、描画するプローブの耐久性を25倍に高める技術を、NEDOが進める「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発(BEANS)プロジェクト」の一環で東芝が東京大学などと共同で開発した。プローブリソグラフィーは、とがったプローブの先端を基板にあててその電気化学反応により微細パターンを描画する。プローブの材質と構造を工夫することにより、耐久性と描画性能を両立した。現在のLIS製造で使われている光による描画技術の光リソグラフィーでは光の回折限界から線幅に限度があり、電子ビームリソグラフィーではコストが高い課題があった。新技術は回路を描くの時間がかかるため大量生産には向かないが、コストが安く済み少量生産回路に向く。

2011年1月25日火曜日

「MEMS2011に7件の論文が採択」、BEANSプロジェクトが成果発表

20110125 日経BP Tech ON
 技術研究組合BEANS研究所のBEANSプロジェクトの成果として、メキシコ・カンクンで開催中の国際学会MEMS20117件の論文が採択された。
 1.3D構造への位置選択的自己組織化微粒子の配列:トレンチ構造の側壁に選択的にポリスチレン微粒子を配列。また、トレンチ加工時に導入されるスキャロップ構造を利用して、ポリスチレン微粒子の配列状態を制御した。
 2.どんな隙間も均一製膜:耐熱温度の低いポリマー材料(PDMS)上へ超臨界製膜法を適用し、 PDMS流路内部へSiO2製膜に成功した
 3.立体構造を使った高容量キャパシタ形成に成功:超臨界流体と呼ばれる特殊な流体中において,立体キャパシタを作製し,平面キャパシタの70倍の高容量化に成功した。
 4.摩耗しにくく、摩耗されても、特性が変わらないプローブ:新規耐摩耗プローブの構造、設計、試作を行い、耐摩耗プローブの耐久性と描画安定性を確認した
 5.誰でも作れる!ナノサイズのデコボコゲル:微細な溝を有するパターン上でゲルを作製することで、微細な凹凸構造を表面に有するゲルを作製した。
 6.大面積電子織物の電導接点:繊維状基材連続微細加工としてシートデバイスの応用を広げるために縦横ファイバーの電気的な接触技術を開発した。
 7.特殊材料ガスを用いないプラズマ化学輸送法による多結晶Si成膜:プラズマ化学輸送法により大気圧で多結晶Si成膜を実現し、この膜を用いて歪ゲージ型の圧力センサを世界で初めて製作した。

2011年1月24日月曜日

たためる薄膜太陽電池、「シリコン並み」発電効率にめど(九大)

20110124日本経済新聞夕刊 1
 有機薄膜太陽電池の表面構造を工夫して、発電効率を高める技術を技術研究組合BEANS研究所に参加する九州大学、パナソニック電工、リンテックのチームが開発した。基板に直径が40ナノメートルの半導体有機材料の突起を多数設けることにより、性能が大幅に向上し、変換効率を6%近くまで引き上げられるという。有機薄膜太陽電池はシート状で軽く、蛍光灯の光で発電したり、折りたたんで持ち歩けることから屋内や携帯機器の電源に期待されている。また、重ねて使うことによる効率向上も期待できる。

MEMS部品設計・解析ソフト

20110124 日経産業新聞 4面フラッシュ
 MEMS部品の設計・解析ソフト「MemsONE Ver.4.0」をMemsONEコンソーシアムが発売する。高周波スイッチの動作解析が可能となった。価格は500万円からで、旧バージョンも含め2011年に120機関、400ライセンスを目指す。同コンソーシアムにはみずほ情報総研、マイクロマシンセンターなどが参加している。

2011年1月21日金曜日

STMicro社とIDタグベンチャーBluechip社が新コンセプトMEMS-IDタグで提携

2011.1 海外技術動向
http://www.azonano.com/news.asp?newsID=21303  
 Bluechips社(豪)は従来のRFIDタグには無い数々の特徴を備える新しいMEMS-IDタグを開発したIDタグのベンチャーである。新ID-タグの構造は、従来の電子メモリーに識別信号を記憶させるのではなく、チップ内に共振周波数の異なる複数のマイクロ振動子を形成して、その各振動子にデジタル信号を割り振る。これらの複数の振動数を読むことによって、対象物を識別することができる。最大の特徴は動作温度範囲の広さで、液体窒素温度である-196℃~+100℃までの範囲で使用可能である。この広い動作温度範囲を生かした最初の用途としてバイオバンクを予定している。
 バイオバンクとは、オーダーメイド医療の実現化に向けた研究を目的として、数十万人のDNAおよび血清試料を集めるプロジェクトのことで、世界各国でプロジェクトが推進されている。集められた遺伝子情報は生活習慣病などの病気と遺伝子の個人差との関係の解明を目的に分析研究されている。ここでDNA等の試料は変質を防ぐため液体窒素中で保管される。この時試料とともに専用ケース中にBluechipのIDタグを埋め込むと、液体窒素中でも情報を読み込むことができる。
 今回Bluechips社はSTMicroelectronics(STM)社と提携し、量産、販売をSTM社に委託することになった。STM社もMEMS事業の拡大になるので、両社の提携が合意されるに至った。

鶏の健康、センサーで管理、体温・羽ばたき計測、産総研が開発

20110121 日経産業新聞8
 ニワトリの翼に取り付ける、ばんそうこう程度の大きさで、温度計と加速度センサーを内蔵して健康管理する、センサーを産業技術総合研究所が開発した。鶏舎全体の5%程度の鶏に付ければ、異変の2日前に分かるとのシミュレーションがある。ニワトリが大きく動いた時だけデータ送信し、消費電力を抑え、平均的な飼育期間である1年以上は電池交換が不要。量産すると100円程度の見通しで、23年以内の実用化を目指す。

2011年1月20日木曜日

MEMS部品に参入、まず小型マイク用チップ(新日本無線)

20110120 日経産業新聞 1
 新日本無線が半導体製造やアンプ用ICの技術・ノウハウを活用し、MEMS向け電子部品市場に参入する。まず小型マイク内臓用の集音チップを発売する。同社はデジタル機器に内蔵するアナログ信号増幅用アンプで高い国内シェアをもち、このアンプICと合わせて販売する。MEMSマイク用チップは米ノウルズ・エレクトロニクスや独インフォニオン・テクノロジーズが先行し、オムロンも開発を進めている。

部品製造の可能性広げる金属粉末射出成型(MIM)

20110120 日刊工業新聞 8
 プラスチック射出成型と金属粉末冶金を組み合わせた複合製造技術である金属粉末射出成形(MIM)は、原料に金属微粉末を使用し、大量のバインダーを添加することにより可塑性を持たせて射出成形し、さらにこの成形体を脱脂・焼結して高精度な金属部品を得る。MIMMEMSなどの半導体製造工程を利用した超精密加工技術を活用したマイクロMIMが欧州を中心に開発され、注目されている。日本は「次世代マイクロMIM」技術を用いた製品を量産化すべき。その一つが、ナノ粉末等の材料を、レジスト薄膜やナノインプリントにより作製した樹脂型に充填し、数㎛サイズのマイクロ構造体を有する三次元複雑形状部品製造法である。

2011年1月19日水曜日

高機能携帯向け近接センサー生産4倍、小型化、実装も容易(シャープ)

20110119 日経産業新聞4
 スマートフォン等に使う近接センサーは、赤外線の反射量により通話時に顔が近づいたのを感知し、タッチパネル機能をオフにして誤動作を防ぐ。シャープは海外競合メーカーに比べて2割強小さく、液晶など表示パネルとの実装制約を少なくした。照度センサーと一体化した製品も製造しており、室内外で画面の明るさを変えるのに使う。

ナノインプリント用マクロ検査分野参入(SCIVAX)

20110119 日刊工業新聞 6
 光の干渉や回折を利用してパターンムラや傷などを見つけるナノインプリント用マクロ検査装置にSCIVAX(川崎市)が参入する。金型や成形品の品質管理に使用し、プレス後の樹脂の残りや離型剤の劣化などを検出する。直径100㎚の柱状パターンで±20㎚程度の変化を検出できる。同社は製造装置に加えて廉価量産用ナノインプリントの検査装置を手掛ける。

2011年1月18日火曜日

次世代半導体向け回路原版、10ナノ台開発前倒し

20110118 日経産業新聞 4
 凸版印刷と大日本印刷は両社合計でシェアの50%を超える半導体フォトマスクの大手だが、それぞれの方向で開発を加速している。凸版印刷はIBMと共同開発し、既存の露光技術を使い回路線幅14㎚に対応するマスクを13年中に量産予定。半導体メーカーは新規設備投資の抑制と既存製造ノウハウを活用できる。大日本印刷はウエハーに原版を直接接触させて転写する「ナノインプリント技術」の確立を急いでいる。線幅22㎚で12年にも量産化し、10㎚台にも対応できるという。実用化できると装置の大幅な低コスト化が可能。両社が開発を急ぐのは次世代露光技術である極紫外線(EUV)の開発が遅れていることによる。EUVが本命とはしながら、半導体メーカーが想定する量産時期に間に合わない恐れがあり、間をつなぐ技術としている。

2011年1月17日月曜日

半導体向け回路原版線幅14ナノ微細化対応(凸版、IBM)

20110117 日本経済新聞朝刊 9
 回路線幅が14㎚のLSI向けフォトマスクを凸版印刷とIBMが共同開発する。現在最高の20㎚の回路に比べて、シリコンウエハーからとれる半導体チップ数が4050%増えるという。10㎚台の微細化にはEUV(極紫外線)による露光技術が必要とされ、この実用化は15年前後といわれていた。両社のフォトマスクは現行の光学レーザーで回路を転写・形成でき、製造装置の全面刷新を行わずに次世代LSIを製造できる。

燃料電池向けフローセンサー(オムロン)

20110117 日刊工業新聞 8
 計測最大流量を高めたMEMSフローセンサーをオムロンが発売する。毎分50リットルだったが70リットルに高め、家庭用燃料電池システムの流量制御を可能とした。11年夏には計測最大流量毎分200リットルタイプも発売し、業務用燃料電池や医療機器市場を目指す。

シリコン基板上に微小な蓄電部品(東大・デンソー)

20110117 日本経済新聞朝刊 11
 シリコン基板上に多数の細い溝を立体構造に仕上げ、微小なキャパシターを作ることに東京大学杉山正和准教授とデンソーの共同チームが成功した。平面上の従来タイプに比べ70倍の電気をためられ、自動車の加速度センサー等小型部品の電源に使えるという。300μm角のシリコン基板に幅2㎛、深さ60㎛の溝を多数掘り「超臨界流体」状態のに酸化ケイ素と銅を順に流し、2層で覆った。電気容量は2.2ナノファラドで、1㎝角のシリコン基板を使えば電気容量は20003000倍になる。

2011年1月14日金曜日

Qualcomm社:MEMSディスプレイ新工場建設で台湾経済省と協力

2011.1 海外産業動向
http://www.vadvert.co.uk/technology/7527-qualcomm-and-taiwans-ministry-of-economic-affairs-collaborate-to-extend-regions-display-technology-industry.html
 Qualcomm MEMS Technologies社はQualcomnが開発したMEMSディスプレイであるmirasol displayの製造拠点の拡充を、台湾経済省の協力のもとで進めることを発表した。
 新工場の建設にQualcomm社は975M$(約800億円)を投資、この工場は2012年に完成の予定である。台湾は電子部品やフラットパネルディスプレイの世界の製造拠点となっているが、今回の新工場建設でさらに強固なものになるであろう。Qualcomm副社長は台湾での工場拡張に台湾の経済省は重要な役割を果たしてくれた。今後もあらゆる面で協力関係を続けていくであろうと語った。
 台湾経済省もQualcommのさらなる発展に期待したいと語った。新工場で製造される商品はmirasol displayの中型サイズへの展開に寄与する予定である。

MEMS発振器は水晶発振器を置き換えられるか?

2011.1 海外技術動向
http://www.newelectronics.co.uk/article/30532/Are-mems-based-oscillators-a-viable-alternative-to-the-quartz-crystal.aspx
 水晶発振器は、これまでコンピュータや通信機器で多大な役割を果たしてきた。最近、製造工程の複雑さや信頼性での課題に対して新たな代替技術(MEMS発振器技術)が起こっている。現在、MEMS発振器は周波数帯域の狭さや温度特性、コスト等の課題を抱えており、本当に置換えられるかという議論が時々なされている。
 MEMS発振器のベンチャー企業の一つであるeoSemi社は、水晶発振器は高コストで、衝撃に弱い課題があり、それに対しMEMSを用いると発振器のさならる小型、低コスト化が可能になると言う。MEMS発振器の技術はCMOSの設計プロセス技術に基いており、温度等動作環境の変化による特性の変動は高精度で補償することができる。この高精度な補償回路技術はeoSemiの強みである。2011年は期待の年になるであろうと語った。
 SiTime社は、Si技術はこれまで多くの既存技術を置換えて来ており、発振器も同様に置き換わるであろうと言う。2010年までにSiTime社は3500万個のMEMS発振器を出荷してきた。このうち95%は既存の水晶発振器の置換えである。しかしスペクトラムアナライザやパルスジェネレータ等の計測器には高い安定性と寿命が必要で、このような用途には、MEMS型は性能的に不足する面があるが、ほとんどの用途で対応可能である。特に温度変化に対応した補償回路技術はこの1年で進み、要求特性を達成するに至っている。
 一方、水晶発振器メーカのIQD社は、高い温度補償が要求される用途でのMEMS型の採用に疑問を持っている。これらの用途では安定性精度2.5ppmが要求され、MEMS型では達成できていない。IQD社の水晶発振器は-40~85℃の範囲で安定性±20ppbを誇る。
 MEMS発振器側の意見として、温度安定性は技術的な問題で解決手段はある。現行のMEMS発振器のコストが高い問題も、量産効果や集積化技術によって下がるであろう。これまでシリコンが既存デバイスを置き換えてきたのと同様に、発振器の分野でも置き換えられると言う。

2011年1月13日木曜日

次世代半導体、製法単純、ナノインプリント(大日本印刷)

20110113 日経産業新聞 7
 ナノインプリント技術により次世代半導体を低コストで製造できる技術を大日本印刷が実用化した。ナノインプリント技術は、回路に対応した微細な凹凸が掘られた回路原版をシリコンウエハーに押し付け、ウエハーに塗られた感光材料に転写するもの。製法が単純であたかもハンコを押すように回路パターンを転写できる。現在最先端の「液浸ダブルパターンニング方式」に比べて1/3のコストになる。消耗品である回路原版の価格が課題であったが大日本印刷は対応に成功した。同社はフラッシュメモリー向け装置を実用化し、DRAMMPUに拡大を見込んでいる。全く新しい方式なので順調に立ち上がるかが課題であるが、立ち上がった時のインパクトは強烈で、高額な設備投資に対応できなかった中堅・下位メーカー巻き返しの可能性もある。露光装置市場でASMLやニコンなどと競合することも予想される。

2011年1月12日水曜日

ナノサイズの金2重ストロー大量作成法(理研)

20110112 日刊工業新聞 23
 光の屈折率の変化を検知するプラズモンセンサーとして高い感度を示す、ナノサイズの金の2重ストローを大量に作成する方法を理化学研究所が開発した。直径400㎚の円柱を500㎚間隔で並べ、金の塗布とエッチング等を繰り返し2重のストローを形成する。既存の微細加工技術では隙間構造を作ることが難しかったが、2重ストローの隙間距離は自由に設計できる。プラズモンセンサーは生体の分子認識としての応用研究が進められている。この技術はセンサー以外にも太陽電池など光を利用する機能性材料の高性能化にも期待されている。

2011年1月7日金曜日

2011年はパーソナルロボット元年になるか?

2011.1 海外技術動向
http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=personal-robot-research
 2011年はロボティックスにとってどんな年になるか。年々増加する高齢者の介護に人工知能を持った看護婦が登場するわけではない。しかし、安全性や信頼性においてロボット技術革新の起点となる年になりそうである。2010年はいくつかのロボットに関する要素技術が標準化されたため、2011年はこれらを活用したロボットの技術開発が進みそうである。
 ロボットメーカのWillow Garage社(米)は標準化されたパーツを用いたロボットPR2の試作機を発表した。これには、移動機、2本の手、必要なセンサ、二つのコンピュータ、24個のプロセッサー、メモリー、ハードディスク、システムソフトウェアが搭載される。価格は$400,000である。PR2にはいくつかの特徴があるが、最も重要な特徴は、標準化された信頼性のあるパーツで構成されていることである。
 サムソン電子はこのPR2の技術をベースに自社技術を加え、2020年までには一家に一台このロボットが設置されることを目指している。 ジョージア工科大学のヘルスケアロボット研究室でも、高齢者のための安全で、作業効率の高いロボットを開発している。現在開発中のロボットは家の中で、高齢者に従って動き、薬の提示を行うことを目指している。
 Boschの研究センター(米)は、ロボット用の高性能MEMSセンサの開発プロジェクトを開始させた。このプロジェクトではMEMS技術を使った加速度センサ、ジャイロスコープ、力覚センサ、大気圧センサ等を開発してPR2の性能、信頼性向上を図ろうとしている。共同研究拠点としてStanford大学、MIT、フランスCNRSが含まれる。

Movea社(米):テレビリモコンを革新するモーションコントローラ開発

2011.1 海外産業動向
http://www.reuters.com/article/idUS93545745620110105
 人の動きの検出技術は今最も注目されている技術分野である。最近ではMicrosoft社の人の動きを検出するゲーム機Kinectが大ヒットしたことが良く知られている。今回Texas Instruments(TI)社は人の動きを検出するデバイスのベンチャー企業であるMovea社から技術提携することを表明した。これは従来のボタンによるコントロールを無くして、人の動きだけで、TVの操作、ゲーム等に入力を行うものである。このデバイスには無線通信、MEMS加速度センサチップ等が含まれている。TVリモコンの機能は最近益々複雑化しており、テレビ番組を見るだけではなく、ウェブを見る場合もある。現在の赤外線方式の場合、TVとの間の距離に制約があるが、モーションセンサ付きなら問題ない。Movea社は本社をカリフォルニア州Milipitasに置き、"Air Mouse"を開発したことで知られている。このマウスをTVスクリーンに向けて動かすことによってTVをコントロールできる。Movea社はフランスでAir Mouseが使えるインターネットTVのプログラムのサービスを始めたことも発表している。
TIはこの技術を用いてTVリモコン、ゲーム他民生分野に応用の予定である。

ハンカチが太陽電池に、電気通す布(産総研、古川電工)

20110107 日経産業新聞夕刊1
 導電性の素材を表面に薄く塗布した糸を織り上げて布とし、微弱な電流を流すと全体がセンサーになる新タイプの布を産業技術総合研究所と古川電気工業、東芝機械などが開発した。シーツに応用すれば寝ている人の位置や様子を感知でき、衣類に応用すればハンカチや洋服の一部が携帯端末の操作ボタンや太陽電池になる。独自の微細加工装置を使い直径0.5㎜の一般的なナイロン糸の表面に導電性の汎用素材と電気を通さないフッ素樹脂を塗布し、電気を通す糸を作った。この糸から1mx3mの布を織り上げた。布に電気を通して手で触れると、手と糸の間の電気量が変化し、触れた位置と力が感知できた。

低炭素社会に貢献する多機能MEMSセンサーモジュール

20110107 電波新聞 31
 オムロンではSSM(Smart Sensing Module)と呼ぶ、センサー・制御・電源・通信の機能を集積化した多機能モジュールを開発中であり、SSMを使用した空調エネルギー最適化システムの実証実験を同社のクリーンルームで行っている。温度、湿度、電流、風速などをリアルタイムでモニターし、最大の省エネ効果を見出すことを目的としている。この中で使われているのがMEMSフローセンサーとMEMSサーマルセンサーである。フローセンサーは熱エネルギー分布の流速による変化を捉える熱式フローセンサーで1.5㎜四方に集積した。サーマルセンサーはベーゼック効果によるサーモパイル方式で赤外線エネルギーを温度に換算し、人を検知している。

オープン型水平分業、LSIとMEMSドッキング(東北大と14社)

20110107 日刊工業新聞 23
 文部科学省の「先端融合領域イノベーション創出拠点の育成」事業採択プロジェクトの一つである東北大学では、LSIMEMS融合プロセス技術について、14社の参加企業がMEMSを使った将来の主力製品を社外との水平分業による実現を目指して取り組んでいる。クローズ型の企業体質をオープン型に変える”場“の役割をプロジェクトは果たしている。水平連携の成果の一つとして、秘密保持のルールを守りながら同一のウエハー上に複数社のLSI試作を実現する「乗り合いウエハシステム」がある。

ナノ粒子、自在に張り付け、ペプチドで接着(東大・Siiなど)

20110107 日経産業新聞10面
 東京大学杉山正和准教授、東北大学梅津光央準教授とセイコーインスツル(Sii)のチームは、特定の物質とくっつくペプチド(タンパク質の短い断片)を接着剤に使い、ナノメートルサイズの超微細材料を張り合わせる技術を開発した。実験では数万種類のペプチドから酸化亜鉛にくっつくものを選び、蛍光物質であるカドミニウムセレンにペプチドを化学物質で付け、シリコン基板上の酸化亜鉛にペプチドを使って蛍光粒子をくっつけた。カドミニウムセレンをカーボンナノチューブに代えても接着でき、針の先につければ原子力間顕微鏡の部品として精度向上が期待できる。

2011年1月5日水曜日

電子産業の豆、MEMSが拓く新規産業

20110105 電波新聞 20面
 MEMS産業は我が国の有望な成長分野である。2010年はコンシューマーエレクトロニクス分野にMEMSが急速に拡大・浸透し、自動車用では過去最大となったが、一方では国際競争が激化してきた。
MEMSの市場規模は2015年で2兆4千億円と急成長が見込まれている。センサーMEMSを中心とした自動車用、情報通信用が7割を占めているが、今後は他分野の増加が見込まれる。
BEANSプロジェクトは、産学コンソーシアムを結成し、バイオ融合プロセス技術、三次元ナノ構造形成プロセス技術、マイクロナノ構造大面積・連続製造プロセス技術の開発を進めている。09年4月からは技術研究組合BEANS研究所が業務を継続している。
研究開発の国際競争激化に対応し、つくばナノテク拠点形成が推進されている。マイクロマシンセンターは拠点のコア領域の一つであるN-MEMS(ナノテクを含むMEMS)の拠点化を進めている。

進捗管理で企業流の開発(技術研究組合BEANS研究所)

20110105 日経産業新聞 7面
 BEANSプロジェクトは大学や研究所、企業など約30機関が参加するが、その研究開発には企業流の方式を取り入れている。進捗管理にガントチャートを使って定期的に確認し、論文発表より特許出願を優先する。その成果はプロジェクト期間の約半分経過した時点で特許約60件の出願に現れている。新たな市場でMEMSの需要を喚起すべく、プロジェクトへの参加企業は基盤技術を国プロで早急に固めたい。しかし、プロジェクト参加企業にとっては難度の高い技術に挑むのが意義としているが、NEDOの中間評価では成果の具体像が見えにくいとの指摘があり、研究体制と評価の両立が求められている。

2011年1月4日火曜日

MEMSを産業の豆に(技術研究組合BEANS研究所)

20110104 日経産業新聞 10面
 BEANS研究所はMEMSが体内や屋外でも使える研究に取り組んでいる。ナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合した新作業創出を目指している。米学術誌「セル」に掲載された東大生産技術研究所の竹内昌治准教授の成果は、蛾の性ホルモンを嗅ぎ取る細胞を生きたままセンサーに仕上げたもの。バイオ研究者とMEMS研究者の協力の賜物であり、生体材料の感度や精度の良さを生かした革新的MEMSを目指す。九州大学は太陽電池や液晶に需要が拡大している有機材料にMEMSとの融合を進めている。MEMSの制御技術により、表面に超微細なおわん型突起(ナノドット)が並んだ有機半導体を作っている。太陽電池に使うとエネルギー変換効率が大幅に上がる。