2010年12月31日金曜日

DARPA(米)海外MEMS R&D機関(シンガポール)へ開発委託

2010.12 海外技術動向
http://www.eetimes.com/electronics-news/4211768/Darpa-to-fund-MEMS-R-D
 The Defense Advanced Research Projects Agency (DARPA:米)はシンガポールの研究機関Institute of Microelectronics (IME)とa Research Institute of the Agency for Science, Technology and Research (A*STAR)及びワシントン大学電気工学科にMEMS関連の研究開発で委託することになった。
 DAPAが海外研究機関へ委託するのは初めてである。研究対象はMEMS技術を用いた高性能キャパシタで、携帯機器の電源や、マイクロセンサの電源として応用する計画である。IMEはデバイス設計及び研究段階でのデバイス試作を担当し、ワシントン大学は、動作理論解析とMEMSプロセス技術開発を担当する予定である。

SensorDynamics社(オーストリア):6軸ジャイロ加速度集積型センサ開発

2010.12 海外産業動向
http://www.i-micronews.com/news/Sensordynamics-combo-sensor-detects-angular-rate,6035.html
 SensorDynamics社は、2003年設立オーストリアのセミファブレスMEMSベンチャーで車載、民生用慣性センサ、ワイヤレスセンサを得意とする。主な出資・協力機関はSiemens、Fraunhofer等がある。 
 今回、同社は6軸のジャイロ加速度集積型センサSD746を開発した。これは温度補償回路を内臓した高密度集積型で民生、産業機器向けに適している。ジャイロ部の測定レンジは±2048°、加速度部は±8gで出力は標準インタフェース(I2C,SPI)による。動作電圧は2.55-3.6V、使用温度範囲は-40-+85℃、ジャイロ部の誤差は±5°、加速度の誤差は±0.1g、温度変化による誤差は±2%である。低消費電力で電池駆動に適しており、動作していない時はパワーオフになる。以上の特徴から本製品は携帯電話、ノートPC、ゲーム、デジカメ、ビデオカメラの他、ロボット制御、ナビゲゲーションにも適している。

2010年12月29日水曜日

国際標準で連携組織、初の”オールジャパン”

20101229 日刊工業新聞 1
 技術の国際標準化を日本企業が共同で進めるための組織「基準認証イノベーション技術研究組合(仮称)」をパナソニック、日立製作所、東芝、三菱電機、ソニー、産業技術総合研究所らが設立する。ISOなどの技術標準化に取り組むほか、標準化活動に携わる人材バンク機能も持つ。電気以外の業種にも参加をよびかける。

2010年12月27日月曜日

太陽電池用シリコン薄膜、大気中で製造、コスト1/10(産総研、三菱電)

20101227 日経産業新聞 10
 窒素ガスをカーテン状に放出し、その中で太陽電池用シリコン薄膜を製造する技術を、産総研伊藤寿浩集積マイクロシステム研究センター副センター長と三菱電機らがBEANS研究所のプロジェクト中で開発した。弁当箱大のヘッドの下部四辺から窒素ガスを吹き下し、さらにその内側ではガスを吸引する。窒素ガスのカーテンで囲まれたヘッド下の領域は、大気中の不純物が入り込めなくなる。この領域にシリコンと反応する水素ガスを入れ、プラズマを発生させてシリコン薄膜を作る。真空チャンバーの中で製造する現行の方法に比べてコストを1/10に減らせる可能性があり、ヘッドを動かせば基板の大きさの制約がなくなる。

2010年12月24日金曜日

パナソニックとImec、SNP(変異遺伝子)検出用Lab-on-chip開発

2010.12 海外技術動向
http://www.azosensors.com/details.asp?newsID=1788
 パナソニックとImecはSNP検出用チップ部品を開発したことを International Electronic Devices Meeting (サンフランシスコ)で発表した。
 このチップにはDNA分離用に最適化されたマイクロピラー型フィルタとチップ上で高圧を発生させるためのマイクロポンプから成る。このチップを用いるとわずかなサンプル量でSNPの検出が行える。
 ImecとパナソニックはSNP検出用の先進的マイクロフルイディクスシステムを得るために異分野を融合させたデバイス開発を行った。SNP検出の第1stepはわずかな血液(0.5μl)を分離部に導入させることで、ここに高圧を発生させるポンプが必要になる。このポンプには最新のポリマーアクチュエータが用いられており、低電圧で高圧を得ることができる。DNA分離部にはMEMS技術を用いた数ミクロンオーダのマイクロピラーアレイが用いられている。このSNP検出システムは上記チップの他DNA取出し部、DNAポリメラーゼ反応部を備え、システムとして動作することが報告された。

自動車用MEMS市場動向(続) by iSuppli

2010.12 海外産業動向
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/3526981123/articles/small-
 2010年の自動車用MEMS市場は過去最高となり、MEMSセンサへのニーズが益々高まっている。センサの需要は、自動車そのものの販売台数をはるかに上回るスピードで拡大している。この拡大の要因は、安全装置の義務化と中国である。例えば電子安定走行制御システム(ESC)やタイヤ空気圧モニタ(TPMS)の義務化の流れがあり、米国、欧州に次いで韓国でも義務化され、日本、カナダ、オーストラリアでも近い将来義務化されるので、さらなるセンサの伸びが期待できる。また中国での自動車生産の伸びは依然好調で電子機器化も進んでいくと期待される。
 次世代の自動車用センサに注目する。現在自動車用MEMSセンサ市場は圧力、加速度、ジャイロ、流量でほとんどを占めている。しかしここ5年で新しい自動車用MEMSセンサ(温度、赤外線、ガス濃度、音響、MEMS発振器、光スキャナ)が大きく伸び、2014年には全体の5%を占めるに至ると予測される。用途は車内の空気質モニタ用の温度、ガスセンサ、ナイトビジョン用赤外線カメラ、リアビューカメラ用のMEMS発振器等である。
 法制化は大きな拡大要因となる。例えば欧州では電子パーキングブレーキが義務化され、ここでは車の傾き検出用に加速度センサが必要になる。他に新たなアプリとして歩行者衝突時の安全システムではフロントバンパーに圧力、加速度センサが埋め込まれる予定である。また車停止時エンジンon-off 制御用には圧力センサが用いられる等、広がりを見せている。
 メーカの動向として民生機器用センサで実力をつけたメーカ、例えばSTMicro等が車載用への参入を狙って着々と準備を進めている。まずは信頼性の低いアプリから参入を果たそうとしている。

2010年12月17日金曜日

Invensense社:新6軸モーションセンサ開発

2010.12 海外技術動向
http://www.azonano.com/news.asp?newsID=20969
 モーションセンサは、携帯機器、ゲーム他、様々な民生機器ですでに応用が広がっている。しかしまだ課題は多く、手の細かな揺れによる動き再現の乱れ、カーナビでのGPS受信不調、ゲーム機でのリアルな表現等において不満が多い。
 InvensenseのMPU-6000は世界初の6軸モーションセンサで3軸加速度と3軸ジャイロセンサを9軸モーションセンシング信号処理ICとともに同一チップ上に集積化している。特徴をまとめると、小型で電池駆動ワイヤレス化に適する。さらに3軸電子コンパスを集積化させると、例えば携帯電話に組み込み、運動パターンをデータ化して健康管理に役立てることができる。ゲーム機のリアリティ向上にも寄与する。歩行者の位置検出精度が向上し、屋内での正確な位置検出まで可能になる。以上の他応用機器の性能向上に大きく寄与するであろう。

MEMSマイクの動向

2011.12 海外産業動向
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/3184948965/articles/small-  
 iPhone4での採用で代表されるようにMEMSマイクの市場は急激に広がり、2010年から2014年までの間に50%以上成長の見込みである。出荷数は2009年の441M個から2010年は696M個に、2014年は1737M個に増加する。
 MEMSマイクはエレクトレットコンデンサ型(ECM)から徐々に置きかえられており、携帯電話の他、小型PC、ビデオカメラにも採用が始まっている。Aplle社によると、以前はECMを採用していたが、現在では、Samsungに次いで世界で2番目のMEMSマイクユーザとなっている。iPhone4では外部環境の雑音低減のため二つのMEMSマイクを使用している。今後も通話品質向上のため2個以上のMEMSマイクを使用するであろう。
 MEMSマイクのパイオニアはKnowlesで、今年度の出荷の80%を占めている。これは基本特許を保有していることが寄与している。しかし最近knowlesに続くMEMSマイク企業が現れてきた。ECMメーカのAAC AcousticやHosiden GrはMEMSマイクをラインアップにあげているが、SiチップはInfineonから購入している。他ではAnalog Devices がMEMSマイクの事業をスタートさせた。これには国際貿易委員会がKnoelesの特許を無効と裁定したことも影響している。

2010年12月16日木曜日

MEMSセンサー出荷量10億個に(STマイクロ)

20101216 日経産業新聞 7
 民生機器用MEMSセンサー市場でトップのスイスのSTマイクロエレクトロニクスはMEMSセンサーの出荷量が10億個に達したと発表した。その9割前後は加速度センサーで、任天堂Wiiなどに搭載されている。同社の生産能力は月産5000万個。

2010年12月10日金曜日

マイクロイノベーションセンター(加)のプロジェクトに加政府12億円投資

2010.12 海外産業動向
http://www.ept.ca/issues/story.aspx?aid=1000395655
 カナダ・ケベック州に設立されたマイクロイノベーションセンター(MICC)はある技術開発プロジェクトを実施するためにカナダ政府から約12億円の投資を受けることになるであろう。
 このプロジェクトでは、最高レベルの研究者を採用して、これまで開発された優れた要素技術を実用化に結びつけるための技術開発が行われる。今回の投資は2009年にカナダ政府から投資された67億円とケベック州からの投資76億円に上積みされる形になる。カナダでは半導体に関連する5つの公的研究機関を設立しており、MICCはその中の一つである。
 一方同地域にはMEMSファンドリーで世界トップのDALSA社があり、カナダIBMやSherbrooke大学とともにMICCに対して研究開発投資と共同開発を行っている。そのためにMICCはMEMS8インチラインやウェハレベルパッケージの技術を保有し、MEMS関係では最高レベルの技術を保有するに至っている。

パナソニックとImec、低電圧駆動で世界最高のQ値を備えるMEMS共振素子を開発

2010.12 海外技術動向
http://www.nanowerk.com/news/newsid=19305.php
 パナソニックとImecは、サンフランシスコで開催されたElectron Decices MeetingでSiGe薄膜プロセスを応用したSOI基板MEMS共振素子を開発したことを発表した。
 この素子は低電圧駆動で世界最高のQ値を備えることを特徴とする。この高いQ値は、ねじり振動モードにおける共振と薄膜による真空封止によって実現された。この素子は、民生機器や車載で用いられている様々なタイミングデバイスにおいて現行製品よりさらなる小型化と低消費電力化を実現できるものである。
 MEMS共振子は、水晶共振子と比べて小型化のメリットが謳われているが、低いQ値と高い駆動電圧が課題となっていた。今回のパナソニックとImecの報告によると、Q値220k(at f=20MHz)と1.8V低電圧駆動を達成している。Q値は気圧の影響を受けるが、真空封止によってそれを防いでいる。薄膜封止は厚さ4μmのSiGe薄膜を用いており、CMOSとの連続プロセスが可能である。振動子と電極のギャップは130nmで低電圧駆動に寄与している。またSiGe薄膜中に設けられたエッチングホールを介しての犠牲層エッチングはチップサイズの小型化に寄与している。
 今回の薄膜真空封止のプロセスはImecのCMOREサービスを活用して開発された。Imecでは、従来のCMOSに新たなマイクロ・ナノデバイスを連続して形成するプロセス技術を保有している。ここでは新規デバイス開発からプロトタイピング、少量量産まで対応が可能である。

光も熱も電気に変換、発電デバイス開発(富士通研)

20101210 日刊工業新聞 26
 熱電変換素子と光電変換素子を兼ね備え、回路を状況に応じて切り替えることで光も熱からも発電するデバイスを富士通研究所が開発した。光電変換は太陽電池と比べて大幅に劣るため、今後性能を高める。入院患者が付ける体温や血圧のセンサー、気象センサーの電源として利用を想定している。

2010年12月9日木曜日

センサーIC拡販、磁気・加速度、米社の代理店に(東京エレデバイス)

20101209 日経産業新聞 7
 半導体商社の東京エレクトロンデバイスは米メムシック社の代理店となり、磁気センサーと加速度センサーを拡販する。メムシック社の加速度センサーは熱を検知して傾きや移動、振動を検知するが、シリコンを使うことでMEMSの競合品に比べ5倍の振動に耐えられる。磁気センサーは地磁気の検知で位置情報を把握するが、消費電力を従来品の1/8程度という。携帯端末やカメラへの販売を目指す。

カンチレバーに半導体、次世代素子計測へ(理研)

20101209 日刊工業新聞 22
 理化学研究所基幹研究所の河野行雄研究員らのチームは、電位の検出部にAFMのカンチレバーを、電位の信号読み出し部に高い移動度を持つ半導体を組み込んだ、新しい電位分布イメージング用センサーを開発した。㎚スケールの高分解能で材料表面の電位分布やノイズ分布を画像化できる。新材料を使った次世代デバイスの検査をしたり作成時の歩留まり向上に期待されている。

DLPプロジェクター、USBリーダー機能搭載(ベンキュー)

20101209 電波新聞 11
 ベンキュージャパンは大会議室やホール向けのDLPプロジェクターを発売する。XGA対応で、電源オンで自動起動、オフですぐに片づけられる。スピーカー装備、USBメモリーの画像を投写、3D対応、4画面分割の同時投写可能なLANディスプレイ機能を搭載。

2010年12月7日火曜日

MEMS共振器、共振特性高く低電圧駆動(パナソニック・IMEC)

20101207 日刊工業新聞 22
 MEMS技術を活用した高性能で低電圧駆動の共振器をパナソニックとベルギーの研究機関IMECが実現した。共振器の性能を表すQ値は22万と業界最高、1.8vの低電圧で駆動可能で従来デバイスの1/3以下の消費電力、チップは0.4㎜四方まで小型化できる。発振器の主流である水晶振動子式に比べて小型化、低コスト化が見込め、既存部品からの移行が期待できる。

MEMS気圧センサー、携帯機器に最適(STマイクロ)

20101207 電波新聞 3
 携帯機器に適したMEMS気圧センサーをSTマイクロエレクトロニクスが出荷する。モノリシック・シリコンチップ上に圧力センサーを形成する独自技術「VENSENS」を活用し、一般的な圧力センサー製造に必要なガラスやシリコンなどのウエハー間接合を不要とし、信頼性を高めている。地下750m9000mという範囲で80㎝の高度差を検知できる。

高精度に人体検知、赤外線アレイセンサー(パナ電工)

20101207 日刊工業新聞 8
 MEMS技術を用いて製品化した8864素子の赤外線アレイセンサー「グリッドアイ」をパナソニック電工が20115月に発売する。エアコン等家電製品への組み込みを想定し、視野角60度で5-10m先の温度分布や人の移動を検知する。熱分布を認識した空調や加熱の効率的制御や、防犯への人感センサーとして使える。

2010年12月6日月曜日

今年のMEMSセンサー出荷数、自動車向け6.6億個、最高に

20101206 日経産業新聞 4
 2010年のMEMSセンサーの自動車用出荷数量が過去最高になるとの見通しを米アイサプライが発表した。自動車生産の回復と、1台当たりの搭載数が増えており、09年比32.1%増の66230万個。角度変化から自動車の横転や回転を検知するセンサーを使用するESC(横滑り防止装置)、圧力センサーを使用するタイヤ空気圧警報装置などが用途。EUではすべての新車にESCが義務化され、市場が拡大している。独ボッシュが先行するがエプソントヨコム等日本勢も参入している。

胆管作製技術を開発(東大、三菱化学メディエンス)

20101206 日経産業新聞 11
 東京大学生産技術研究所の酒井康行教授、藤井輝夫教授らと三菱化学メディエンスのチームは、コラーゲンのゲルを使用してバラバラの肝臓細胞から胆管を作成する技術を開発した。作成した直線2㎜程度の胆管の中を消化液の胆汁が流れることを確認した。肝臓細胞を塊にして培養すると細胞の間に胆管ができることは知られていたが、方向がバラバラだったり途中で切れていたりした。「思い通りの方向に制御して人工的につくれた」のは初めてという。新薬開発で安全性を調べる動物実験の代替技術として実用化を目指す。

2010年12月3日金曜日

STMicroelectronics社:圧力センサを海抜高度測定へ応用

2010.12 海外技術動向
http://pr-usa.net/index.php?option=com_content&task=view&id=553215&Itemid=32
 海面からエベレスト山の頂上まで1m以下の精度で海抜高度が測定可能な絶対圧力センサがスマートフォンやその他の携帯機器に搭載されようとしている。STMicro社のLPS001WPは、新たな技術開発により超小型、超高精度で絶対圧力(海抜高度)が検出可能なため、スマートフォン、スポーツウォッチの他、車載気圧計、産業機器用途にも応用可能である。
 STMicroのVigna部長は次のように語った。「MEMS技術は圧力、角速度、方位等の物理量の検出を従来センサより低価格、高精度で実現してきた。しかし顧客ニーズに対していかに対応してきたかは、供給者側の創造力に制限されてきたところもある。」
 従来のGPSは2次元の位置情報しか得られなかったが、このセンサを用いることによって3次元での位置情報が得られる。例えばビル内で火事に合った時、自分が今どの高さにいるかを知って避難することができるし、救助隊員にとっても何階にいるかわかるので有用な情報となる。
 LPS001WPの絶対圧力検出範囲は300~1100ミリバールでこれは海面を基準にして
-750mから+9000mに相当する。新センサの製造はSTMicroのプロセス技術"VENSENS"が用いられており、ウェハtoウェハ接合で高い信頼性を実現している。
 素子の基本構造はピエゾ抵抗が形成されたSiダイアフラムを用い裏面空間をウェハ接合により閉じた構造から成る。温度補償回路を内蔵し、センサ出力は標準デジタル出力形式(12C)に準ずる。性能面での特徴を以下に示す。
・精度0.065mbar(80cmに相当)
・破壊耐圧はフルスケールの20倍
・温度補償回路内蔵
・絶対圧力校正済みで出荷
・標準パッケージ(HCGLA-8L)使用
・2010年12月から1000個注文時、$2.8で供給

スマートフォン用MEMSの動向

2010.12 海外産業動向
http://www.nawbo.biz/mems-mems-sensors-for-smartphones/
 携帯電話へのMEMSデバイスの搭載は2002年から始まり、SiマイクやFBAR RFフィルタが最初に搭載された。最近では加速度センサ(傾き検出)、CMOSイメージセンサが欠かせないものになっている。2010年はさらにMEMSの搭載が加速されようとする分岐点になっている。2009年の携帯電話用MEMS市場は$3.55Bに対し、2015年は$7.91Bに拡大する見通しである。なぜそのように成長するか、ここではその要因を探ってみる。
 2015年にはスマートフォンの占める割合が44%に達すると見込まれており、スマートフォンの機能向上にMEMSが寄与すると予測されている。GPS機能はすでに標準化されつつあるが、スマートフォンでは、加速度、ジャイロ、電子コンパスを搭載する高精度型が採用される。すでにiPhone4で実証されている。
 RF-MEMSに関して、さらなるマルチバンド、マルチモード化が進み、RF-MEMSの採用も増える。特にRFフィルタ、可変キャパシタ、MEMS発振器が劇的に増大することが予測される。
 Siマイクは低コスト化が進みコンデンサマイクに取って代わって主流になるであろう。特にデュアルタイプSiマイクは周辺のノイズキャンセリング機能を持たせられ、今後採用が増えると予測される。 
 MEMSプロジェクタも今後低消費電力化が進み、採用増になるであろう。他にMEMSスピーカや環境センサも有望である。
 携帯は有望市場だけにメーカ間の競争も益々激化するであろう。ここ2年間の間にMEMSのビジネスモデルが随分変化してきた。いわゆる大企業の垂直統合型に対するMEMSベンチャーの水平分業型での挑戦である。ここ数年で成功事例が増えてきており、今後が注目される。

STマイクロ、気圧センサー

20101203 日経産業新聞 4
 スイスのSTマイクロは気圧測定に使う圧力センサーを発売する。気象観測所や自動車、産業機器への搭載を見込んでいる。携帯情報端末に組み込みGPSと連動させると、2次元の位置に加えて建物の高さや階数を把握できる。

シリコンベースのMEMS発振子、コストや信頼性で有利(米サイタイム)

20101203 電波新聞 2
 水晶を使わずシリコンベースのMEMS発振子を米サイタイムが開発した。周波数特性として誤差5ppm32.768kHzの水晶発振子機能をそのまま代替でき、サイズは1/10。リアルタイムクロックや時間管理への応用としては世界初となる。水晶でははんだ付けやリフローなどの工程でも周波数シフトを起こすことが多いという。MEMS発振子の内部では16倍の周波数で発振させ、プログラムで周波数を落としている。このプログラム性や、コスト、信頼性、振動耐性でもシリコンが有利という。

2010年12月1日水曜日

印刷で5マイクロメートル回路、高精細液晶向け(DIC)

20101201 日経産業新聞 1
 プリンテッド・エレクトロニクスと呼ぶ、インクジェットなどの印刷で電子部品の回路を形成する方法で、5マイクロメートルの微細線を描けるインクをDICが開発した。ナノレベルの銀粒子をペースト状にし、合成樹脂に分散させてインクとすることにより、従来に比べ20分の一の微細加工が可能となった。電子回路の微細化に有効で、液晶テレビの高精細化や太陽電池のエネルギー変換効率向上が期待される。

2010年11月26日金曜日

自動車用MEMS売上2010年は過去最高を更新の見通し(iSuppli)

2011.11 海外産業動向
http://www.techeye.net/hardware/automotive-mems-sensor-market-to-exceed-record-shipments-in-2010
 自動車用MEMSの売上は2009年の$501.2Mに対し2010年は32.1%アップの$662.3Mに達し過去最高(2007年640M)を更新の見通しである。
 これは2009年が大きく落ち込んだのに対し、明るいニュースである。2014年まで13%の成長が続く見込みである。この成長の要因を探ると、自動車の姿勢制御システム(ESC)、タイヤ空気圧モニタ(TPM)用のセンサの拡大があげられる。ここで用いられているMEMSセンサは、他のアプリケーションにも拡大し、ゲーム機コントローラ、iPod、Segways等に搭載されている。しかし最も大きな用途は、自動車の安全制御システムにあると考えられる。この安全システムは最初に米国と欧州で採用された。これはオーストラリアやカナダにも広がりを見せ、将来韓国、日本にも拡大する見込みである。
 自動車用MEMS拡大のための新しいセンサも開発中である。車内環境制御のための空気質モニタやナイトビジョン(赤外線カメラ)、リアビューカメラ用MEMS発振機等である。また駐車時に車両の傾きを検知する加速度センサの採用の動きもあるが、これは現在継続検討されている。

MEMSマイク特許戦争:Analog Devices社がKnowles社に勝つ

2011.11 海外産業動向
http://www.marketwatch.com/story/analog-devices-wins-mems-microphone-patent-case-2010-11-22?reflink=MW_news_stmp
 国際貿易委員会はMEMSマイクの特許係争で、Knowlesに対し、Analog Devices(AD)の請求に従うよう裁定を下した。
 裁判官はKnowlesの特許は無効と結論付けた。その結果ADのMEMSマイクの輸入、販売は許可されることになった。ADの副社長の談話「ADは2008年に最初にMEMSマイクを市場に送り出した。ADはサイズや音質において最高の品質のマイクを供給してきた。我々は今回の判決に満足している。」この件とは別にADはMEMSマイクの製造方法におけるウェハ固着防止方法に関し、Knowlesを特許侵害で訴えている。
 AD社のiMEMSマイクは高音質で知られている。世界の設計技術者はiMEMSのプロセス技術の汎用性を良く知っている。これらの技術がモーションセンサやマイクに応用されているのである。ADの集積化技術はMEMSマイクと音響処理ASICと集積化させて最高の性能をもたらしており他社を凌駕するものである。

Discera社:精度10ppmのSi発振器を車載、無線機器用途へ展開

2010.11 海外技術動向
http://www.businesswire.com/news/home/20101122005697/en/Discera%E2%80%99s-Silicon-Oscillators-Deliver-10-ppm-Accuracy
 Discera社はUC.Berkelyのスピンオフベンチャーとして2001年創立され、Si発振器のベンチャーとして知られている。同社は誤差10ppmの高精度品とプログラム可能なSi発振器を発表した。
 この精度はSi発振機としてこれまでの最高レベルで、小型化が要求されている車載、民生機器、パソコン、ビデオ、無線機器へのの搭載を狙う。本製品はサイズ2.5x2.0mm、周波数150MHz、温度範囲-40~85℃で10ppmの精度を確保している。これまでのMEMS発振器と比較して2倍以上の信頼性、水晶発振器と比較して20倍以上の耐衝撃性、耐振動性を備える。
 DisceraのCEOであるDiamond氏は、「他社のMEMS発振器の精度は100ppmに対し、Discera社は10ppmを達成した。これによって他社を圧倒した。さらに温度特性が注目されるべきで、小型化に加えて85℃においても動作が保障されている。また実装性においてもあらゆる水晶発振器の置換えが可能である。動作電圧1.7~3.6V、周波数は1~150MHzまでプログラム可能、動作温度は-40~105℃、納期は2~3週間である。価格は10万個で$0.48である。

2010年11月22日月曜日

動き感知電源いらず、変形で電圧発生(クラレ)

20101119 日経産業新聞 1

 曲げると電圧を発生する特殊素材を使い、電源がなくても物体の動きを感知する変形センサーをクラレが開発した。特殊素材は炭化水素系の重合体で、ゴムのように柔らかく、曲げるとイオンが移動して電圧を生じる。曲げ方の強弱で電圧は0~3ミリボルトと変化し、曲がったままでも一定の電圧を発生し続ける。この素材に銀ペーストの電極をはさみセンサーとした。胸に張り付ける心拍センサーや、握る力のセンシングをするゲームコントローラー等の用途を見込んでいる。

2010年11月19日金曜日

MEMS慣性センサの見通し:Kionix社CEOインタビュー

2010.11 海外産業動向
http://www.digitimes.com/news/a20101117VL200.html
 Kionix社は1年前ロームに買収されたところだが、現在も加速度センサの有力メーカである。最近同社は民生機器用に開発された新しいジャイロスコープと加速度センサを発表した。同社の今後のMEMSセンサの展開についてCEOのGregory Galvinにインタビューをする。
Q:新MEMSジャイロスコープの最も重要視しているアプリケーションは?
A:主要市場はゲーム市場だ。手の動きを検出するハンドセットに注目している。ただこれがジャイロの最大の目標とは考えていない。次世代の車載制御や医療機器向けに注目している。
Q:2003年に既にKionixではジャイロスコープを開発している。最近開発したMEMSジャイロとの差は?
A:前の製品は自動車、産業機器、ナビゲーション用であった。サイズや出力が大きく、1軸タイプで民生機器用には向いていなかった。今回発表した新ジャイロは2軸、3軸を揃え、小型、低消費電力化を達成している。
Q:新ジャイロで車載や医療等、民生機器用以外も狙う計画は?
A:当面は民生用だが、将来他の市場に展開することも考えている。
Q:Kionixは加速度センサ市場で成功を収めた。Kionixが最近発表した新3軸加速度はこれから数年の間に主要製品となるか?
A:新3軸加速度は多くのアプリに対応するもので、さらなる加速度の事業拡大に寄与するであろう。3大アプリとして携帯電話、ゲーム、車載安全システムを計画している。
Q:加速度センサの競争は激しさを増している。Kionixはどのような差別化戦略を持っているか?
A:確かに競争が激しくなっている。特に民生分野で低価格化が進んでいるので、我々は、製造コストの低減に努め、コスト競争力で勝負する。
 加速度センサは年間20%の割り合いで低価格が進んでいる。しかしこれから数年は、低下率に歯止めがかかるのでは。戦略として、最近は高性能化は飽和し、小型低コスト化ばかりになっている傾向がある。しかしそれも限界が近づいており、低価格化のペースが下がるのでは。ゲーム機用市場競争に打ち勝つにはいくつかの要素がある。価格はその一つであろう。これからはユーザにとっての使いやすさも要因になるだろう。エンドユーザは落下防止や人の動きの再現等様々なニーズを持っている。それらのニーズに対していかに使いやすいデバイス供給できるかである。
Q:KonixのMEMSセンサ売上の割合はどうなるか。ジャイロは民生用に安定した売上が期待できるか。
A:現在MEMSセンサでは加速度が100%だ。2011年度にはジャイロの売上が伸びて全体の15-20%になるよう計画している。
Q:Kionixのビジネスモデルは全部自前か?アウトソーシングする計画は?
A:現在はすべて自前だ。ただ生産効率を上げるのに、有効な方法があるかこれからも調査していく。
Q:MEMS市場全体に対してどのような見通しを持っているか?
A:2011年はゲーム用ハンドセット向けが大きく伸びる。他にiPadやネットブックが有望であろう。やはり携帯機器分野でのモーションセンシングが最大の市場となるであろう。健康増進分野(フィットネス)も興味深い。MEMSは今後も成長が期待できる分野として取り組んでいくつもりである。

2010年11月17日水曜日

つくばナノテク研究拠点、経産省、投資前倒し

20101117 日刊工業新聞 2

 経済産業省は「世界的産学官連携研究センター」と名付け、ナノテク研究に集まった研究者や学生が研究や議論できる施設を、筑波の産業技術総合研究所内に建設・整備する予算を10年度補正予算に盛り込んだ。企業と大学、研究機関の研究者が機器や施設を共同利用する場で、筑波大、東京理科大、芝浦工業大、ニューヨーク州立大、スタンフォード大が参加予定。

2010年11月16日火曜日

「発電床」薄さ1.5㎝、価格抑え、施工も容易(東リ)

20101116 日経産業新聞 1

 人が歩くと、カーペットに組み込まれた圧電素子が振動を電気に変換する、発電床の新製品をインテリア大手の東リが開発した。慶應義塾大学発ベンチャーの音力発電(神奈川県藤沢市)と共同開発した。床材に発光ダイオードを組み込み、暗い場所での非常口誘導などへの使用を想定している。

情報をエネルギーに変換、「マックスウェルの悪魔」再現

20101116 日刊工業新聞 26
 自律的に動くナノマシン等に応用でき、微細加工技術により情報をエネルギーに変換するシステムにつながる実験に東京工業大学の佐野雅巳教授、中央大学の宗行英朗教授らが成功した。熱力学第2法則は温度差があればエネルギーを取り出せるとする基本法則で、マックスウェルの悪魔は測定に応じてシステムを制御する仮想的な「悪魔」がいると、温度差がなくてもエネルギーを取り出せ第2法則を敗れるとするもの。近年、悪魔がが情報を処理するのに必要なエネルギーを含めれば同法則が成り立つことが分かったが、これを実験で示されたことはこれまでなかった。今回の成果で、熱揺らぎを情報として利用すればエネルギーに変換でき、薬を運ぶ生体モーターなど、自律的なナノマシン開発につながると期待されている。

2010年11月12日金曜日

Invensense社:3軸加速度と3軸ジャイロを1チップに集積化

2010.11 海外産業動向
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/4588206452/articles/small-times/nanotechmems/industry-
 InvenSenseは、3軸加速度と3軸ジャイロを同じSiチップ内に集積したチップを開発した。さらにこの集積型チップに3軸電子コンパスと9軸モーションセンシング信号処理チップを合わせたモジュールを開発した。
 モーションセンサは、民生機器分野で大きく重要を伸ばしており、スマートフォン、iPAD、TVリモコン、ゲーム用ハンドセット、デジカメ、ビデオカメラ等で応用が進んでいる。これらのアプリにおいては、例えば手の細かい震えまで再現できるように、さらに高精度なモーションセンシングが要求されている。また最近、メーカの供給能力不足もあり、市場の伸びが緩んでいる。
 Invensenseの加速度/ジャイロ6軸集積型センサの特徴は、加速度とジャイロ間の軸調整が容易にできて検査工程が簡略化されるる。またパッケージが小型化されるので低コスト化につながる。さらに3軸電子コンパスを含めた総合的なモーションセンシング信号処理アルゴリズムにより、高精度化され、市場のニーズに答えることができる。
 このセンサは現在サンプル出荷可能な状態である。

オムロン:MEMSをモバイル機器用へ展開

2010.11 海外産業動向
http://www.eetimes.com/electronics-news/4210691/Omron-crafts-MEMS-for-mobile
 オムロンのこれまでのMEMSアプリは産業機器、医療機器が中心であった。今後はここで蓄積された技術を生かしてモバイル機器やグリーンデバイスを中心に展開していく。
 特に圧力センサ、RFスイッチ、赤外線画像センサでスマートフォン、ナビゲーション、ビルオートメーション市場を狙う。例えば圧力センサはこれまで産業機器や血圧計が中心であった。この圧力センサチップの裏面をウェハ接合を用いてSiで塞ぐことによって絶対圧センサができる。これをスマートフォン又はパーソナルナビゲーションに組み込むと、自分がビルの何階にいるかを検出できる。またRFスイッチもスマートフォンへの採用を目指す。
 赤外線画像センサは、室内での人の位置を、静止、動作中を問わず検出可能で、それによって空調をきめ細かく制御して省エネルギーにつなげる。

2010年11月10日水曜日

オムロン・STマイクロが協業

20101110 日経産業新聞 4

 オムロンとSTマイクロエレクトロニクスは電子式ガスメータ向けモジュールの開発で協業する。オムロンがMEMSフローセンサーを、STマイクロエレクトロニクスがセンサーを駆動するICをそれぞれ担当する。

2010年11月9日火曜日

微小振動で発電、日本にも波(米、エンオーシャン・アライアンス)

20101109 日経産業新聞 3
 エネルギーハーベスティングの電子部品で同アライアンスの技術が事実上の標準になりつつある。電池不要なスイッチとしての導入事例が多く、部品同士の接続性や信号送受信の無線技術を磨いている。住設や電子部品を中心に参加企業は160社、製品群も600となっている。評価キットの出荷は日本向けが一番位多く、日本でも採用の動きが加速するだろう。(同アライアンス会長兼CEOグラハム・マーティン氏)

MEMS関連製品を拡充(ローム米子会社)

20101109 日刊工業新聞 9

 ロームの子会社、米カイオニクスがMEMSを活用した製品を拡充した。3軸加速度センサーと民生用2軸ジャイロスコープの出荷を開始する。

2010年11月8日月曜日

理想の「熱電変換」目指して、工場廃液から発電

20101108 日刊工業新聞 15
 工場排熱等の捨てられているエネルギを活用できる熱電変換技術の開発が活発化している。導体の両端に温度差があると電圧が生じるベーゼック効果を利用するもので、課題は幅広い温度域に対応でき、安価で高い熱電性能を持つ材料の開発である。無機化合物では産総研の舟橋良次主任研究員が、コバルト系酸化物のモジュールとテルル化ビスマスのモジュールを重ねたカスケード型を開発した。有機化合物では山口東京理科大の戸嶋直樹教授はプラスチック材料を探求し、有機無機のハイブリッド材料を模索している。両者に共通なテルル化ビスマスは熱電変換では評価されているが、テルルは毒性があり、希少金属で高価なことが難点であり、脱テルル化ビスマスを目指している。

2010年11月5日金曜日

STMicroelectronicsとオムロンがガス流量センサを共同開発

2010.11 海外技術動向
http://www.newelectronics.co.uk/article/28993/STMicroelectronics-and-Omron-collaborate-on-flow-sensor-technology.aspx
 STとオムロンはガス流量センサを共同開発したことを発表した。これはSTが開発中のガス流量計に用いられる。
 このデバイスは、オムロンが保有するMEMS流量センシング技術とSTが開発してきたアナログ制御技術を含む。センサ素子内部で温度や圧力の変化を補償する機能を有し、ガス成分の変化の影響も補償することができる。またガス流量計の国際規格である埃の影響の除去する機能も兼ね備えている。このセンサは7.2x8.6cmの回路基板に実装され、高精度と低消費電力を実現している。また内蔵するバルブ駆動用モータの制御の他、温度や振動の補償機能も搭載されている。同回路基板には、パワー制御IC、液晶駆動回路、温度センサ、加速度センサ、発振回路、モータ制御回路も搭載されている。オムロンのマイクロデバイス事業部長である関口義男は「将来の市場拡大が期待されるガス流量計の分野において、STとオムロンは新たなコラボレーションによってトップに立つことができた。」と語った。

MEMS Exective Congress速報:MEMS市場予測(~2014年)

2010.11 海外産業動向
http://www.eetimes.com/electronics-news/4210412/Analysts-split-on-MEMS-growth-rate-forcasts
 11月3日、4日アリゾナ、スコットデールでMEMS Exective Congressが開催された。その中で、市場予測に関するセッションが行われ、YoleとiSuppliで意見が分かれた。
 MEMSデバイスの市場は2010年は、7000億円に達する見込みである。今後5年間は、二桁成長するということで両者の予測は一致した。2014年の市場に関しては両者で異なり、Yoleは$16billion、iSppliは$10billionと予測した。この差が生まれた要因をあげると、Yoleが電子コンパスを含めたのに対し、iSppliは含めていない。マイクロフルイディクスに関し、Yoleはガラス基板、ポリマー基板上に作製されたものを対象にしたのに対し、iSppliはシリコン基板上を対象にしている。さらにiSppliの予測では、ゲーム機器用市場は飽和し、かつ単価が急激に下がるとしている。
 両者に共通した見通しとして、有望なMEMSデバイスの市場が急成長すると予測している。その代表は光MEMSで特にピコプロジェクタが民生機器に広がり、大きな成長を遂げるとしている。他に医療機器用センサ(診断用センサ、ドラッグデリバリー用センサ)は年率30%、またビル省エネ用センサは年率25%で伸びると予想されている。

2010年11月4日木曜日

チャレンジ!新部品、車体姿勢検知センサー(エプソントヨコム)

20101104 日経産業新聞 7

 エプソントヨコムは、自動車の走行安全装置向けに、水晶を使い精度を向上したジャイロセンサーを投入する。自動車の横滑りを検知する「ヨーレートセンサー」と、横転を検知する「ロールセンサー」の2タイプ。この市場はボッシュが先行し、STマイクロエレクトロニクスも参入しており、競争激化が予想される。自動車への横滑り防止装置(ESC) 搭載義務付け(EU,アメリカ、カナダ)による市場拡大を見込んでいるが、シリコン素子を使った競合品との価格競争が課題。

2010年11月1日月曜日

環境発電部品、一斉に投入(村田製作所)

20101101 日経産業新聞 1

 エネルギーハーベスティング(環境発電)向けの電子部品について、村田製作所が4種類の製品を実用化し、産業機械や自動車など幅広い分野に向け投入する。光発電では、オフィスの照明程度の光で発電する太陽電池とコンデンサーを組み合わせ、数ワット程度の電力を供給する。振動発電では、2枚の基板の静電気量の変化で発電し、手を軽く振る程度の振動で100μワット程度を発生する。温度差で発電する熱電変換素子と、圧力を電気に変換する圧電素子を搭載した部品は開発済み。これらは消費電力の小さな無線部品やセンサーと組み合わせたモジュールとして使い、電源や配線が不要なセンサーネットワークを構成できる。

2010年10月29日金曜日

MEMSジャイロ:新たな戦いへ

2010.10 海外産業動向
http://www.i-micronews.com/lectureArticle.asp?id=5711
 MEMSモーションセンサは、民生機器用を中心に急速に需要を拡大している。特にMEMSジャイロスコープが伸びており、競合する企業に変化が見え始めている。
 スマートフォン用3軸ジャイロスコープの競争は今始まったばかりであり、現在の主な用途はやはりゲーム機用である。Yoleによると2010年のMEMSジャイロの市場は$418Mで、そのうちゲーム機用が$162Mを占める。すでに5千万個以上のWiiモーションプラスが販売された。この中には、Invensense、エプソントヨコムのジャイロが搭載されている。だがこれは始まりにすぎない。本年9月にはソニーがモーション機能を付けた新製品PS3の販売を開始した。ソニーは計9軸のモーションセンサ(加速度、ジャイロ、電子コンパス)を搭載した。ここでは、9軸に対応した信号処理アルゴリズムが開発され、人間の動きをより詳細に再現している。任天堂は携帯ゲーム機DSにモーションセンシング機能を付けた新DSを2011年2月に発売予定である。
 Yoleは次の2社の動きに注目している。ソニーはこれまで2軸のMEMSジャイロを開発し、既にソニーのゲーム機や小型のデジタルカメラに搭載されている。ソニーはMEMSジャイロでは新顔であるが、他社のデジタルカメラにも搭載されている模様である。これはすでにソニーがMEMSジャイロの大きな供給元になっていることを意味する。一方すでにMEMSジャイロでは大手のパナソニックが、ゲーム機や携帯電話への搭載を目指して積極的に攻勢をしかけてきた。Yoleの予測では、来年発売の任天堂モーションセンシング付DSに採用される見通しである。
 MEMSジャイロのこれまでの主要メーカは、STMicro、エプソントヨコム、Invensenseであったが、最近Kionix、Boschも参入しており、さらにソニー、パナソニックも加わり、競争が激化する模様である。これらの情報は来月Yoleから発刊する報告書に詳細が述べられる予定である。

Ventmark Technology Solutions社:TSVを用いない新3次元積層構造開発

2010.10 海外技術動向
http://www.electroiq.com/index/display/packaging-article-display/5625661505/articles/advanced-packaging/packaging0/integration/die-stacking/2010/10/vertical-die-stacking-goes-3d-without-tsv.html
 Ventmark Technology Solutions社のAndrew Smithは小型化のための新たな3次元チップ積層技術を発表した。特徴は現行の貫通配線技術(TSV)を使わずに、積層配線する技術である。
 パッケージング技術に関し、これまでSMT、COB、パッケージonパッケージ(POP)、TSV等様々な技術開発がなされ、小型化が進められてきた。今話題のTSVは高度集積化を実現できる技術であるが、必ずしも大きな実用化には至っていない。唯一CMOSイメージセンサでボリュームゾーンの成功例があるが、低コスト化、熱歪、検査方法等に課題があり、これらを克服していく必要がある。一方、中間配線板を介して上下にチップを実装する構造やPOP技術は、汎用的な材料、プロセスを用いるため小型、低コスト化が期待できる方法として開発が進んでいる。
 新たに開発したパッケージング技術は、Vertical Interconnect Structure(VI)と呼ぶパーツを用いる。これはチップが実装された二つの配線板を縦に積層化する時、スペーサと二つのチップ間の配線を兼ねる役目をする。(図参照)この構造はワイヤボンドを削減し、システムinパッケージを小型、低コストで実現できる技術である。VIはセラミック製でピン配置や配線は任意に設計可能である。またVIをAlNのような熱伝導率の高い材料にすることによって放熱性能も高められる。これらの特徴(小型、低コスト、高熱放散性、堅牢性)を生かしたVIパッケージの用途は、車載、人体埋め込みデバイス、携帯機器、ワイヤレスセンサ、エナジハーベスター、加熱を伴う機器等が考えられる。VIパッケージの最終形状はSMT用標準サイズになり、既存の回路基板に実装可能である。以上のようにVIはTSVを用いない低コスト3次元チップ実装として今後様々な用途に活用されていくであろう。

2010年10月28日木曜日

MEMS方式ディスプレー、省電力、液晶代替狙う(日立ディスプレイズ)

20101028 日経産業新聞 7

 日立ディスプレイズが開発したMEMS方式ディスプレーが注目されている。従来のLEDバックライト方式の液晶ディスプレーに対して消費電力を半分以下に抑えられ、動きの激しい動画の表示、色の再現性も高い。仕組みは、画素ごとにMEMS技術による微小シャッターを配置し、バックライトとして設置した赤青緑3色のLEDを切り替えて点灯し、このタイミングに合わせてシャッターを開閉する。アメリカ・ベンチャーのピクトロニクスの技術を導入、11年後半の量産開始を目指している。

2010年10月22日金曜日

STMicroelectronics社:太陽光発電システムにMEMS加速度センサ応用

2010.10 海外産業動向
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/6094961712/articles/small-
今は誰もが太陽光発電のメリットを認識している。最近、多くの太陽光発電システムの導入に伴い、その安全性と盗難の問題に関心が集まってきた。その課題に対する一つの解がMEMSセンサの応用である。必要な機能として、振動検出や盗難防止機能があげられる。対象は住宅向けの太陽電池インバータや太陽電池付き街灯も含まれる。
MEMSの新たなアプリとして新エネルギーシステムが注目されている。地震の多い地域に太陽光発電システムを設置する時は、地震によるダメージを配慮しなければならない。また台風の多い地域での風の影響も同様である。例えば住宅用で一般電力網に接続された太陽電池が損壊した場合は、放電が起こり火災が発生する可能性がある。安全のためには損壊が起こりそうになった時、その前に一般電力網から遮断する必要がある。一方太陽電池、2次電池を備えた街路灯は、地震等の天災が発生した時、フルパワーで非常灯としての機能を発揮しなければならない。以上の両方のケースにおいて、MEMS加速度センサが地震や強風のモニターで活躍しそうである。現在そのための開発が行われており、回路付き3軸加速度センサが機能することが検証されている。
●盗難防止
太陽光発電システムが遠隔地に設置された場合は、盗難がゆゆしき問題になる。MEMS加速度センサは、角度を検出することができる。もし誰かがパネルを移動させた場合は、角度検出機能によって移動されたことを検出し、必要な処置を自動的に行うことができて盗難防止につながる。

Freescale社:自動車安全システムのための先端センサ開発加速化

2010.10 海外産業動向
http://www.marketwatch.com/story/freescale-accelerates-automotive-safety-with-advanced-airbag-sensors-2010-10-19?reflink=MW_news_stmp
より安全な自動車の実現は、自動車産業発展のために不可欠であり、特に次世代のエアバッグシステムはその牽引役になるであろう。1987年から2008年の間に装着された前席用エアバッグのうち25780個以上が現在も使用されている。自動車メーカは、さらなる性能向上、低コスト化を目指して、開発を続けている。
Freescale社は安全性を高めるために新たな取組みを明らかにした。エアバッグ用インテリジェントセンサシステムMMA16、MMA26は標準的なインタフェースDSIを用いて、圧力、加速度、乗員検出、シートベルトセンサからの信号をエアバッグ動作系へ送信する。これらのセンサはFreescaleの次世代エアバッグ用センサ郡において主要な位置を占める。従来より、早く正確に衝突を検出するためにいくつかの新しい性能を備えている。X-Z軸検出、ダンプ制限機能付き慣性センサを出しているのはFreescaleだけである。このダンプ制限機能は衝突時の高周波や高調波の歪の影響を少なくすることができる。また2kHz以上の出力、4個のセンサを同じバス上に設定できる。これらの仕様は設計者にさらに機能の追加の余裕を与えることができるであろう。

Invensense社:ドバイに国際営業拠点設置

2010.10 海外産業動向
http://www.ameinfo.com/245877.html
ドバイシリコンオアシス(DSO)は、この地域の開発拠点として開発されている。MEMSモーションセンサで世界トップのInvensense社は、DSOに国際営業本部を設置した。
同本部ではエンジニアを抱え、米国以外の国:台湾、日本、韓国等のユーザに対して市場開発や製品サポートを行う。DSOの所長は言う。我々がこれまで開発してきたモーションセンサをよりグローバルに展開するため、国際拠点としてドバイを選んだ。ドバイ政府によるとDSOは優遇条件を設けて、ハイテク企業を誘致していくとのことである。

ナノテク研究深耕、米NY州立大と協定(産総研)

20101022 日刊工業新聞 27

 産総研とアメリカ・ニューヨーク州立大学ナノスケール理工学カレッジ(CNSE)はナノテクノロジーやエレクトロニクス分野で研究協力する覚書を結んだ。産総研は物質・材料研究機構、筑波大学と世界的なナノテク研究拠点形成を目指す「つくばイノベーションアリーナ」を進めており、CNSE IBM、東芝、東京エレクトロンなどが参画するナノテク拠点を持っている。

MEMS部品市場、再拡大へ、小型化加速で再編進む

20101022 日経産業新聞 4

 フランスのヨール・デベロップメントによるとMEMS市場規模は2007年以降の横ばいから、2010年以降は年率13%で成長する。民生機器・自動車に加え、医療・産業分野が伸びる。これは、シリコンウエハーの8インチ対応等の量産による加工コスト低下によるもの。小型化への技術革新も進んでいる。日本勢は慣性センサー分野で多機能品の開発と量産投資に後れを取った。MEMS部品の開発や量産は投資規模が大きく、市場成長が急激なので、企業の再編は進むだろう。

非接触で高精度3D測定、5μmレベルで部品の形状把握(ニコン)

20101022 日経産業新聞 1

 非接触式の3D測定器は高速で大量の測定点データを得られるが、プローブを当てて計測する接触式の精度1μm程度に比べ30μm程度が限度だった。ニコンは複数のセンサーを搭載した光学モジュールと5軸の同時制御システムを組み合わせ、5㎛の精度の3D測定器を開発した。センサー部は光が対象物に遮断された状態を測定するセンサーと、焦点があった部分の情報で測定する画像センサーを一体化した。自動車や航空機関連メーカーへの売り込みを図る。

3D化技術、日本勢に光明、巨額設備投資不要に

20101022 日経産業新聞 3
 半導体メモリー分野で、回路やチップを縦方向に積み上げる「3次元化技術」による低コスト・大容量化を目指す動きが高まっている。メモリで微細化を進めすぎると誤動作が発生する可能性があるが、確立した技術によるチップを何層にも積み上げ、層を貫く微細な穴を多数形成し、穴に酸化膜や電極を埋め込む。何世代も前の加工技術で、最先端の工場をしのぐ成果が得られる。東芝は「BiCS」技術を開発している。エルピーダもチップ間を高速につなぐシリコン貫通電極(TSV)の量産技術を開発している。

2010年10月21日木曜日

感度5倍の磁気センサー、医療機器向け(愛知製鋼)

20101021 日刊工業新聞 8

 愛知製鋼は感度が従来製品に比べて5倍の磁気センサー「高感度MIセンサ」を発売する。1ナノテラスの超微小な磁気を検知でき、電子機器や食品分野の磁性体混入検知装置、医療機器向けに販売する。

ジャイロセンサー、厳しい環境下でも正確(アナログ・デバイセズ)

20101021 電波新聞 4

 米アナログ・デバイセズ(ADI)は、市場に流通する製品では最も高い安定性と耐衝撃性を備える、高性能・低消費電力・デジタル出力付きジャイロセンサーの新製品を発表した。差動クアッド・センサー構造により強い衝撃や振動条件下でも正確な動作が可能。

「究極露光」EUV実用化へ、日本メーカー出遅れ

20101021 日経産業新聞 3

 半導体露光装置最大手のオランダASMLEUV(極紫外線)露光試作装置の出荷を始めた。早ければ2年後にも回路線幅20㎚前後の量産が始まる。一方、日本の装置メーカーは出遅れている。現在最先端の2030㎚の製造では露光を2回行う「ダブル・パターンニング」を行うが、工程増によるコストが2倍となるが、EUVでは1回で済む。量産用装置は推定1100億円で、1時間当たり100枚のウエハー処理で現状方式とコストが見合う。しかし、現状では光源出力が追い付いていない等、量産技術確立には課題が残っている。業界3位のキャノンは最先端開発から脱落し、残るはニコンのみだが、ニコンのEUV装置実用化は15年以降の方針である。

2010年10月20日水曜日

世界3強時代が到来、変わる半導体業界地図

20101020 日経産業新聞 3
 半導体の微細化進展に伴い、システムLSIを手掛ける日本企業は製造を外注に移行し、最先端の製造技術を持つのは超巨大工場「ギガファブ」のみとなりつつある。高騰する最先端工場への投資額に対応できるのは、台湾TSMC、アメリカ・インテル、サムスンの3強に加え、アメリカ・グローバルファウンドリーズ程度。20年後には3強のみとの予測も。製造を外部委託する企業の道は「ファブライト」と呼ばれる事業モデルで、設計、商品企画、販売に注力するもので、テキサスインスツルメント等は対応済み。日本企業も製品の提案力やシステム構築力の強化にかじを切り始めている。

2010年10月15日金曜日

水ビジネスに対応した新しい水質センサの開発

2010.10 海外技術動向
http://www.kansascity.com/2010/10/15/2317017/research-and-markets-water-quality.html
 水をめぐって現代の世界には様々問題が現れている。水不足、水テロ、環境汚染問題等である。そのために新しい水質センシング技術の開発が求められている。水の値段が上がるにつれて、地球規模での水の危機管理が叫ばれている。水関連企業は既に水処理プラントの展開を始めており、その場合、配水経路毎にリアルタイムでの水質モニターを設置する必要がある。
 様々な分野のセンシング技術の発展は目覚しいものがあるが、こと水質センサに関しては蚊帳の外である。しかしながら最近になって水質センサの技術の開発の動きが、水処理企業や水消費企業において活発になってきた。これはMEMSデバイス技術、ラボオンチップ技術の発展が、水処理や水質センサを最新テクノロジー開発の舞台に引き上げた。
 これまでの水質分析は、サンプリングした水を分析室に送り、分析装置を用いていたため長い時間と高いコストが必要であった。しかしMEMS技術を用いることによって、これをリアルタイムで迅速に水質分析することが可能になる。ただしこれを実用化するためには、飲料水、工業水どちらにおいても信頼性が必要となる。現在開発者は、水に対する安定性、小型、マルチセンシングを備える水質センサの開発に取り組んでおり、徐々に成果が現れている。
 このような新しい技術開発は、こまでの水質分析システムやそれを扱う企業と競合状態に陥るだろう。彼らは現在すべてのシェアを握っており、新たに開発された新概念のセンサに対して抵抗を示すと考えられる。しかし水質センサの開発は進めなければならない。新しいセンシングテクノロジーのインパクトは大きく、水の管理における法制改正や価格に大きな影響を与えることになるであろう。
 現在、進展している例として韓国のソウルでの開発状況を紹介する。新規に開発された水質センサを配水経路に設置してすべてリアルタイムでモニターを行っている。得られたデータはオンラインで解析される。韓国でこのように発展した背景として隣国の脅威の影響も考えられる。商用的に成功するための要因としては、低エネルギー消費と環境にやさしいことがあげられる。現在の技術開発が進展すれば、これらの課題をクリアすること可能であろう。

最近のMEMS産業動向

2010.10 海外産業動向
http://www.micromanufacturing.com/showthread.php?p=1032
 MEMS市場は2010年、不況から立ち直りそうである。Yoleの予測では2010年の市場は$8B(約7千億円)、2015年には$16.4B、年成長率15%が見込まれている。一方iSuppliの予測は2010年$6B、2014年$10B、2020年$20B、年成長率11.6%としている。この二つの予測を比較すると2015年で$5.5Bもの差が生じている。この原因は、iSuppliが対象をシリコンMEMSに限っているからである。
 iSuppliによると、高機能MEMSの伸びが大きくなると予想され、アプリケーションは産業機器、ビルオートメーション、エナジーハーベスティング、燃料電池、医療機器、軍事用、航空機、ワイヤレス機器等が有望視されている。高機能MEMSの市場は2014年まで年率19.7%が期待されている。中でもビルオートメーション、半導体製造装置が大きく伸びると予想され、オムロンがこれを証明するであろう。
MEMS第3の波
 Analog Devices社の副社長Martinは今年の初めに、慣性力MEMSセンサを代表とする高機能品市場は第3の波を迎えるであろうと予想した。第1の波は1990年代の車載用センサで、第2の波は2000年代のゲーム等民生機器用センサである。第3の波は、高機能、高価格品へのニーズが高まり、アプリとして産業機器、自動工程モニタ、携帯医療器具、ナビゲーションシステム向けのニーズが増加するであろう。
 高機能型モーションセンサの需要が広がる見込みである。2011年の予測では、車載用の高機能型の市場は減少するが、民生機器用は増加し、分野別ではNo.1になりそうである。MIGのKaren Lightmanは高機能型の構成としてオール in 1パッケージをあげている。複数のMEMSとICが1パッケージ化され、チップ間の通信もその中で行なわれる。代表例が加速度、ジャイロ、電子コンパス、回路を1パッケージ化したモーションセンサである。
 またDixon-Warrengも今後のMEMSは単機能から多機能へ、さらにネットワークに繋がる機能も重要になると予測している。HPのHartwellは、これからはセンサネットワークが重要になると言っている。食料管理、建築物モニター、スマートビルディング、生体モニター、エネルギー管理、自動車、交通システム、倉庫管理、モバイル機器等枚挙にいとまがない。
 Freescale社は多機能集積型センサと一体化される制御回路チップに関する特許を積極的に出している。同社の集積型モーションセンサは、スマートフォン、医療機器、ナビゲーションシステム等で評判が高い。
MEMSにファブレス時代がやってきた
 MEMS全体の売上におけるファブレスメーカのシェアは急増しており、現在は33%に至っている。Lightmanによると、新製品を市場に出すまでのスピードはファブレスが早く、しかもコスト競争力も強い。しかもここ数年TSMCのように能力の高いMEMSファンドリーが増えている。SVTCのように中規模の量産受託やアイデア段階から共同で開発する企業も出ている。SVTCによると、現在なおMEMSプロセスはカスタマイズされたものが多いが、各工程を標準化できれば、さらにスピードアップと低コストが図れる。今後MEMSメーカとファンドリーによって工程の標準化が進めば、さらにファブレス方式のビジネスが盛んになると予想される。

2010年10月14日木曜日

センサー技術、センサー最近の研究成果

20101014 電波新聞 14

 NEDO Fine-MEMSプロジェクトの成果を活用したマイクロミラーと、真空封止による熱絶縁構造を用いて、高感度の非接触温度センサー素子をオムロンが開発した。赤外線を効率よく集光するためシリコンウエハー上にマイクロミラーを形成した。この素子をアレイ化することにより、広い空間でも人のセンシングが可能となる。

センサー、高精度化など新製品開発加速

20101014 電波新聞 9

 各種センサー開発の加工技術でMEMS技術が注目されている。加速度センサーやジャイロセンサーの携帯機器への搭載が定着しており、圧力センサーやフォースセンサーにも展開している。使用されるウエハーもシリコンに加え、高精度を求め水晶を素材とするケースが増えてきた。

360度方向の風量計測、エアコン用センサーユニット(オムロン)

20101014 日刊工業新聞 8

 温度、湿度、風速を同一箇所で観測し、無線通信するMEMSフローセンサーユニットをオムロンが開発した。センサー素子上に風が流れることで発生する温度差を、風速と風量に変換する気流センサーを2軸設置し、360度方向計測できる。ユニットにMEMS気流センサー、温度、湿度センサー、無線機能を組み込み、ユニットを置いた場所の最適制御を行うエアコンを想定している。

2010年10月8日金曜日

光源に使用、DLPリアプロシステム(ヨネイ)

20101008 日刊工業新聞 9

 ヨネイ(東京都中央区)はベルギーのバルコ製で、光源にLEDを使ったDLP(デジタル・ライト・プロセッシング)リアプロジェクションシステムを発売した。光源の寿命を55000時間以上とし、メンテナンスの負担が少ない。道路や鉄道などの監視業務を見込んでいる。

テルアビブ大学:光式ナノジャイロスコープ開発

2010.10 海外技術動向
http://www.gizmag.com/nano-gyroscope/16581/
 テルアビブ大学は、ピンの先端に装着できるほど極小サイズの光式ナノジャイロスコープを開発した。
 旧来の機械式ジャイロスコープは回転機構を備え、船舶、航空機のナビで用いられているように非常に高精度だが、15-20cmとサイズが大きいという欠点があった。iPhone4はMEMSジャイロスコープを搭載した最初のスマートフォンとして知られている。ジャイロの他に加速度、近接センサ、外光センサも含まれている。ジャイロと加速度の組合せはゲーム機Wiiのように6軸を活用してきめ細かな動きを検出することができる。iPhone4の3軸MEMSジャイロは振動式ジャイロでナビゲーションシステムにも幅広く用いられている。このように現行の小型ジャイロはMEMS式だが、開発中の光式ジャイロは、ピンの先端に装着できるほどの極小サイズでかつ、MEMS式より高精度な動きの検出を可能にする。
 テルアビブ大学の研究者は、イスラエル防衛省のサポートでMEMSジャイロを上回る極小サイズと高精度を兼ね備える半導体レーザジャイロスコープを開発した。原理は半導体レーザの光の強度と波長が、回転力によって変化することを活用している。ここで用いられるレーザの直径はわずか数十ミクロンである。ジャイロセンサとしてのチップサイズも1mm×1mmで信号処理ICチップの上に容易に積層可能である。
 このデバイスのアプリケーションの見通しを次に述べる。まず現行MEMSジャイロと同様、スマートフォンとゲーム機、GPSナビゲーションでさらなる小型化が可能になる。特に持ち主の正確な位置までGPSで割り出せるようになる。また極小サイズとういう特徴を生かすと、医療機器への応用が考えられる。例えば内視鏡の先端に装着して動きを制御する。人体埋め込みチップにも装着可能である。テルアビブ大学の研究者は、現在はまだ実験中で、2-3年で検証は完了すると言っている。

ISSYS社:MEMSデバイス・システム生産ライン拡張

2010.10 海外産業動向
http://www.azonano.com/news.asp?newsID=19886
 Integrated Sensing Systems, Inc.(ISSYS)はマイクロフルイディクスを得意とするベンチャーで、2010年のMEMS生産ラインの拡張を完了し、工場設備面積は5,400平方フィートになったと発表した。
 拡張は、システムレベル(モジュール)のラインの生産能力拡張と高品質化を狙ったもので、パッケージング、検査工程まで含む。デバイスとしては医療機器、産業機器を対象としている。例えば無線式人体埋め込みデバイスの生産量は、年間1万ユニットの能力を有する。ISSYSのCEOであるNader Najafiは次のように言っている。ISSYSのMEMS生産ラインは月産数千チップにまで高めることができた。これらのチップは心臓や脳に埋め込む医療機器や燃料電池用センサ(メタノールセンサ、流量サンサ等)の販売拡大に寄与するであろう。また副社長のDoug Sparksは、MEMSを応用した微小量液の密度センサやコリオリ式流量センサの増産計画が完了した。また最近燃料電池用の成分センサやMEMS流量計の販売が伸びており、今後の燃料電池の伸びに伴って大きな市場が期待できると言っている。

mPhase Technologies社:MEMSを応用したスマート電池開発

2010.10 海外技術動向
http://www.rdmag.com/News/Feeds/2010/10/information-tech-mphase-smart-nanobattery-featured-in-september-201/
 mPhase Technologies Inc.はMEMSとナノテクを応用したスマート表面技術で注目されている会社である。デバイスとしてドラッグデリバリ、マイクロ分析システム、化学センサ、防汚表面などマイクロフルイディクス(microfluidics)を中心としたデバイスを開発している。
 今回mPhaseは同社の技術を生かして、スマートナノ電池を開発した。この新しい電池に用いられている要素技術は、ポーラスSiメンブレンとmicrofluidicsから成り、20年以上の電池寿命を実現している。電解質溶液がSiメンブレン界面を通して移動する量をmicrofluidicsによりコントロールしている。最初電解質溶液は、固体電極に対して分離されているが、microfluidicsで電解質溶液が一定量、Siメンブレンを通って固体電極に到達した時から電池としての機能を発揮する。電解質溶液の移動量のコントロールが高い性能を生み出しており、ワイヤレス機器等の電池の交換を不要にする画期的な技術である。U.S,Armyの補助のもとでプロトタイプはすでに開発済である。mPhaseのCEOであるRon Durandoは、このデバイスは軍用の他、まず人体埋め込み型の医療機器に応用可能と言っている。さらに将来はドラッグデリバリや血糖モニタにも応用可能になるだろうとも言っている。

2010年10月7日木曜日

小型・高信頼性ジャイロセンサー

20101007 電波新聞 14-15

 エプソントヨコムはジャイロセンサー(角速度センサー)を開発している。物体の直線運動の速度変化を計測する加速度センサーに対し、ジャイロセンサーは回転運動の角速度を計測する。6(加速度3軸+ジャイロ3)で計測することにより物体の3次元の動きを捉えられる。ジャイロセンサーはデジカメの手振れ防止、カーナビの推測航法、ゲームのリモコン等に用いられているが、同社は世界で搭載義務付けが進んでいる自動車の横滑り防止装置に注目している。同社の水晶による振動ジャイロセンサーは、センサー素子のもつ低振動感度、低衝撃感度特性に加え、内臓ローパスフィルターの最適設計により、異常出力の抑制を実現している。

MEMSマイクロホン、小型で携帯端末向き、先行米社を日本勢追撃

20101007 日経産業新聞 4

 小型で、湿度や温度変化に強く、表面実装等で基板に取り付けやすいMEMSマイクロホンが注目されている。音の振動を捉える振動膜にMEMS技術で微細加工を施したシリコン素子を使うマイクで、スマートホンやデジカメで採用されている。現状ではアメリカのノウルズ・エレクトロニクスが世界シェアの8割以上を占めているが、新規参入が相次いでいる。ホシデン、TDKSTマイクロエレクトロニクス等が参入している。

常温で電子部品実装、金属接合技術を開発(アドバンストシステムズ)

20101007 日刊工業新聞 9

 アドバンスシステムズジャパン(東京都三鷹市)は、横浜国立大学の八高隆雄教授と共同で、常温で電子部品を実装できる金属接合技術を開発した。プローブをプリント基板の金メッキ電極に押し付けた状態で20ヘルツの振動を加えて摩擦拡散接合させる。プローブは二重らせんのバネ構造となっており、引っ張ると接合部分がねじれてせん断される。現在プローブをMEMS技術で作成しており、これをプレスで製造して単価を引き下げる。

MEMS製造ライン本稼働(日本電子材料)

20101007 日刊工業新聞 8

 半導体検査用プローブカード製造大手の日本電子材料は、兵庫県尼崎市のMEMS製造ラインを完成し、本格稼働を始めた。同社は、近年、MEMS技術を応用した製品を開発し、国内外の半導体メーカーに売り込んでいる。

2010年10月6日水曜日

傾き計測、誤差1/8、小型化、カーナビに搭載(エプソントヨコム)

20101006 日経産業新聞 5

 傾きを計測する「慣性計測ユニット」の開発サンプルを20114月に出荷するとエプソントヨコムが発表した。3軸角速度センサーと3軸加速度センサーを一つの部品とし、2x3x4㎝程度の大きさとして小型化し、カーナビなどに搭載可能とした。GPSで検知できないトンネルなどでも車体の向きや傾きから自動車の動きを割り出すことができる。

2010年10月5日火曜日

MEMS非接触温度センサー(オムロン)

20101005 日刊工業新聞 11

 MEMS技術を使用した高感度の非接触温度センサーをオムロンが完成した。赤外線を効率よく集光できるマイクロミラーをシリコンウエハー上に形成し、応答速度3ミリ秒で感度を約7倍に高めた。広い空間を計測でき、空調制御や防犯への活用が見込まれる。

MEMSシャッタ方式カラーFPD、量産試作品を開発(日立ディスプレイズ)

20101005 電波新聞 1

 MEMSによるシャッタを高速開閉し、赤緑青のLED光を制御する、薄型カラーディスプレーの量産試作品を開発したと日立ディスプレイズが発表した。新パネルはアメリカ・ピクストロニクス社との共同開発。液晶パネルに使われる偏光フィルム、カラーフィルター、液晶、バックライトも不要で、光利用効率は60%以上という。

体内埋め込み型センサー、血糖値高いと発光(東大など)

20101005 日経産業新聞 11

 糖尿病患者の血糖値センサーとして期待される、体内埋め込み型センサーを東京大学生産技術研究所の竹内昌治准教授とテルモなどの研究チームが開発した。高分子化合物のポリアクリルアミドの中に蛍光物質を混ぜ込んだ特殊な材料を作り、直径0.1㎜のゲル状のビーズにして体内に注射する。この材質はブドウ糖と結合しやすく、紫外線を当てると青緑色に発色する。ネズミの耳に注射した実験では濃度に応じて光は強くなる事が確認できた。510年以内の実用化を目指す。

2010年10月4日月曜日

小型IMUに参入、角度検出性能8倍(エプソントヨコム)

20101004 日刊工業新聞 8面
3軸の角速度と3方向の加速度からなる慣性運動量を検出するIMU(慣性計測ユニット)にエプソントヨコムが参入する。同社は水晶にMEMS技術を応用したQMEMSにより、小型化と安定性を実現した。高精度のIMUはこれまで軍事向けで民生用には使いにくかった。民生機器の動作解析や制御、移動体制御、振動制御・安定化などの需要を見込む。

2010年10月1日金曜日

アナログデバイス社(ADI):高性能MEMSジャイロセンサ発売

2010.10 海外産業動向
http://www.i-micronews.com/lectureArticle.asp?id=5531
 アナログデバイス社(ADI)、高性能MEMS静電ジャイロセンサ(ADXRS453)を発売。感度を0.01°/sec/gまで高め、さらに衝撃や振動の影響を排除。
 ADIは第4世代高性能MEMSジャイロセンサシリーズに、さらに高感度、高精度型のデジタル出力ジャイロセンサを加えた。特徴は衝撃や振動の加わる過酷な環境であっても、高精度な検出を可能にしていることである。検出感度は0.01°/sec/g、振動矯正をわずか0.0002°/sec/g、ノイズレベル0.023°/sec/√Hz、消費電流 6mAという性能を誇る。パッケージはSOICプラスチックパッケージとSMT標準型を用意、動作電圧は3.3-5V、使用温度範囲は-40~125℃で産業機器や防衛機器に適している。
 マネジャのKelly Atkinsonは言う。”ADIが進めるQuad-Sensor™シリーズは、衝撃、振動の誤差要因を排除する性能に優れるため、軍用の自動車、航空機、船舶で用いられるGPSのように過酷な環境であっても高精度を確保できる。MEMSジャイロセンサでここまでの感度を備えるものはこれまでに無い。”ADXRS453は角速度最大±300°/secまで測定可能で、出力は16-bit又は32-bitでデジタル出力される。2010年12月にサンプル出荷の予定。サンプル価格は1000個購入時、SOICタイプ$48.24、SMTタイプ$62.29である。

Freedonia Group, Inc. :米国センサ市場予測(~2014年)

2010.10 海外産業動向
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=40212
 米国のセンサ市場は年率6.1%の成長が予測され、2014年の市場規模はBillion$13.1に達する見込みである。2009年の市場は減少したが、今後は期待できる。内訳は、まず自動車が不況の反動で大幅に増産される見込みである。特にタイヤ空気圧センサ、乗員の位置センサの需要が急増するであろう。センサ市場成長の要因として、設計・製造技術の革新があり、特にMEMS技術と光エレクトロニクス技術の進歩が主要因となっている。米国では自動車産業が最大のセンサユーザである。2009年は不況の影響で落ち込んだが、2014年に向けての自動車用センサ市場は、年率14%の伸びで、2014年の市場規模はB$3.9に拡大の見通しである。
 また産業機器用センサ、医療用センサも伸びる見通しで、年率4%の成長が見込まれる。特に注目されるのは近接センサ、ポジションセンサで自動車製造装置の伸びとともに、これらのセンサの伸びが期待できる。新しい自動車用センサ応用システムとして自動走行安定装置や次世代エアバッグがあり、これらに搭載されるセンサも伸びるであろう。
 他に化学物質センサが伸びる見込みである。これはセンシング性能の向上の他に製造技術の開発が進み、小型、低コストを達成することができたからである。一方、センサ市場の多くを占める圧力、温度、流量センサ等は市場が成熟しており、横ばいの見通しである。

West Australia大学:食べ物の新鮮度を検出するMEMS赤外線画像センサ

2010.10 海外技術動向
http://www.theaustralian.com.au/australian-it/scientists-set-sights-on-cutting-food-wastage/story-e6frgakx-1225930192551
West Australia大学:軍用の赤外線画像センサ技術を食べ物の新鮮度検出技術に応用。

 赤外線画像(波長画像)センシング技術は、当初米国防衛省の出資で、UWAマイクロエレクトロニクス研究Grがミサイルの弾道検出用に開発した。この時別の投資機関からWest Australia大学に農業や食物製造プロセスへの応用を目的に、同類の技術を用いて土壌成分検出や蛋白質の検出技術の開発を委託していた。もし食べ物の新鮮度(腐敗度)をセンシングできれば、あらかじめ賞味期間を表示する必要がなくなるし、食べ物の廃棄を少なくすることができる。メカニズムとして食肉が腐った場合、発する赤外線の波長が変化することが知られている。これはバクテリアの密度が変化することに起因している。
 このように新鮮度を検出できる赤外線画像センサを小型化してバーコードスキャナーに組み込むことができれば、例えばスーパーの店員は、価格、数量とともに品質の管理もできる。同類のセンサを備える装置で最近日本でリンゴの甘さを検出できる機械が開発され、スーパーマーケット向けに販売された。しかしこれは大型の設備で高価である。同研究Grは現在MEMS技術を用いて小型の赤外線画像センサを開発中で、2、3年以内には果物、肉等食べ物の新鮮度を検出できる小型センサを開発できる見通しとのことである。

2010年9月30日木曜日

ソフト付きセンサー、データ送信判断、(オムロン)

20100930 日経産業新聞 4面
MEMSセンサーに情報を抽出、制御するICなどを組み込んだ「スマート・センシング・モジュール」をオムロンが開発した。サーバーへのデータ送信要否を分析、判断し、通信料を抑制し、電池寿命を従来の5倍に伸ばすことができる。

2010年9月28日火曜日

半導体製造向け計測器、最小31ピコで位置決め(マグネスケール)

20100928 日刊工業新聞 1面
300㎜x300㎜の平面で最少31ピコメートルまで安定的に距離を測れる格子干渉式計測器「大判2次元スケール」をマグネスケール(東京都港区)が開発した。同スケールは目盛が1マイクロメートルの格子縞状の平板に赤外線レーザーを照射し、光の回折や干渉から格子の位置を検出し距離を測る。半導体製造装置や工作機械の位置決め検査装置に利用できる。

2010年9月27日月曜日

磁性絶縁体から電気エネルギー(原子力機構、東北大)

20100927 日刊工業新聞 24面 

これまで不可能とされていた絶縁体からの電気エネルギー取出しに、日本原子力開発機構と東北大学が成功した。磁石である磁性ガーネット結晶という化合物を利用し、絶縁体中で温度差により電子の磁気(スピン)の流れが生じることを確認した。絶縁体に金属薄膜を取り付け、スピンの流れを電気エネルギーに変換できることは明らかになっており、これらの成果を合わせて絶縁体ベースの熱電変換素子を作ることができる。

シリコン製マイクロホンを量産(STマイクロ)

20100927 日経産業新聞 5面 
シリコン製マイクロホンをスイスのSTマイクロエレクトロニクスが量産する。オムロンがシリコン振動部をMEMS加工して供給し、信号処理ICと組立をSTマイクロエレクトロニクスが担当する。低価格でのシェア拡大を目指す。

2010年9月24日金曜日

Lemoptix社(スイス):ポケットサイズMEMSプロジェクタ開発

2010.09 海外産業動向
http://www.photonics.com/Article.aspx?AID=44379

 未来のプロジェクタとして、容積わずか1cm3の小型プロジェクタが開発され、これから携帯電話やノートPCへの搭載の勢いが増しそうである。
 
 Lemoptix社はローザンヌ連邦工科大学のスピンオフ会社でKayalらのGrは容積1cm3、クレジットカードサイズでMP3リーダが一体化された小型プロジェクタを開発した。モバイル機器の他、自動車用、手術用に採用される見通しである。投影画面の大きさは、スクリーンとプロジェクタの距離で調整でき、最少50cmの距離で15インチ相当の画面が得られる。どの大きさにおいても、鮮明な画像が得られる。もう一つの大きな特長は、消費電力が少ないことで、現行のLED省エネタイプと比べても、さらに30%削減できる。2011年に産業機器用として最初の商品化が予定されており、その次の年から民生機器用に順次搭載されていく予定である。
 
 MEMSマイクロミラーは数百ミクロン厚のSiウェハから作製され、次世代光学デバイスのための有望な要素技術である。このマイクロミラーは1秒間に2万回の動作が可能で解像度VGA(640×480)画素を実現している。本デバイスの製造はファンドリー等の第3者機関に委託する。本デバイスはこれまでのMEMSミラーに対して低コストの他に技術的な優位点を持ち、特に自動車用プロジェクタ、具体的にはスピード、GPS画面等の情報を前方ガラスに映し出す用途に用いられる。医療機器メーカと検討を開始しており、手術個所の上部に透明スクリーンを置き、関連情報を見ながら手術をすることが可能である。

Colibrys社(スイス):列車異常検知システム用MEMSセンサSiemensと共同開発

2010.09 海外産業動向
http://www.prlog.org/10944395-colibrys-mems-accelerometers-qualified-by-siemens-mobility-for-high-speed-train.html

 Siemens社とColibrys社は、ドイツ高速鉄道最新型にColibrys社製MEMS加速度センサを採用することを発表した。
 第4世代高速列車には、最新の異常検知システムが搭載され、そこにMEMS加速度センサが用いられる。新世代列車では、乗客の安全・快適と同時にメンテナンスコスト削減、修理の簡便性が求められる。それに対応した形で、Siemensは異常検知システムを開発した。これはベアリングやシャフトの摩耗、ホイールの破壊の他、あらゆるトラブルを自動検出するシステムである。これはSiemenseとして初めてのシステムで1個のシステムに24個のセンサが搭載され、1車両に200個のセンサが搭載される。2010年は3台の車両が試作され、2011年には最終使用が決定される。具体的には低周波数振動センサ、高周波数Piezo振動センサが組合わせられ、ベアリングの摩耗等を検出する。加速度センサは走行環境の変化を捉えColibrys社はこのタイプで最も信頼性の置けるセンサを供出している。このような複雑な異常検知システムを開発するために、あらゆる異常運転を再現させたり、安全と快適性を兼ね備える制御システムが開発され、それに合わせて最適なセンサがColibrysによって開発された。

Rice大学:光を収集するナノアンテナ検証に成功

2010.09 海外技術動向
http://www.sciencecentric.com/news/10092118-nano-antenna-concentrates-light.html

 テレビ、ラジオ用に電波を収集するアンテナはすっかりお馴染みである。ライス大学NatelsonらのGrはナノテクノロジーを用いて、光を収集するナノアンテナを開発した。
 鋭い先端部を持つ金電極をナノスケールの距離を置いて対向させると、これがレーザ光を収集(増幅)することを見出した。現象としては、発射されたレーザ光が、ナノギャップに捉えられ、光強度が1000倍にも増幅されることが判明した。この現象は光センサ、化学センサ、バイオセンサへの応用可能性が考えられる。特に分子オーダで化学成分を検出できるので、有害物質検出に有効である。ギャップが大きい場合は何の変化も起こらないが、ナノスケールになるとまったく異なる挙動を示しはじめるので注意が必要となる。同Grはこの現象を解析する技術を開発した。それはナノギャップ間を流れる量子トンネル効果による電流を測定する方法である。このトンネル電流はある周波数の電圧を印加すると増大する傾向があるが、光の周波数と強度によっても増大することをつきとめた。これは光増幅効果であるプラズモン効果と考えられる。

欧州市場で売上拡大、環境とMEMS柱に(エプソンヨーロッパ)

20100924 電波新聞 3面
エプソンヨーロッパエレクトロニクスでは環境分野とMEMS分野を新たな柱としている。水晶をベースとした「QMEMS」を欧州にも展開すべくマーケティング活動に取り組んでいる。

露光装置で攻防、米インテル向け受注(ニコン)

20100924日刊工業新聞 6面
米インテル向けの半導体露光装置についてニコンとオランダASMLの攻防が激しくなっている。露光装置市場ではASMLが日本勢のシェアを逆転しているが、最先端の露光装置ではニコンとASMLの2社の争い。しかしArF液浸の露光装置でのニコンのシェアは2割程度で、インテルは次世代の22ナノメートルのプロセス開発にASMLの装置を導入しており、量産段階でもASML採用かとの報道もある。ニコンもArf液浸装置の性能目標を引き上げるとともに、32ナノメートル以降の露光装置に求められる回路パターンの重ね合わせ精度に自信を深めている。

JST産学イノベーション加速事業、東大下山勲教授採択

20100924 日刊工業新聞 14面
科学技術振興機構(JST)による先端計測分析技術・機器や周辺システムの開発を推進する「産学イノベーション加速事業」につき2010年度の新規開発課題が決められ、その一つとして東京大学大学院情報処理工学系下山勲教授の「内視鏡のための単眼三次元異種情報計測システムの開発」が採択された。支援額は1件当たり約5000万円。

2010年9月21日火曜日

アナログMEMSマイクユニット、特性損ねず業界最小クラス(ホシデン)

20100921 電波新聞 4面 
 業界最小クラスのMEMSマイクロホンユニットをホシデンが開発した。専有面積37%減、体積48%減と小型化したが従来品と同等の音響特性・信頼性を有している。携帯電話や車載機器を対象市場としている。

2010年9月17日金曜日

サムソン:ナノテク音電変換素子開発:人の声が携帯電話の電池寿命を延ばす

2010.09 海外技術動向


人の声が携帯電話の電池寿命を延ばすかもしれない。サムソンの研究者Grはわずかな会話で電池寿命を向上させる方法を研究している。Park、Kimらは化粧品の原料である酸化亜鉛(ZnO)を振動発電素子に応用する研究を行っている。同GrはZnOナノワイヤを二つの電極でサンドイッチにした素子を用いて、100dbの音源から50mVの電圧を取りだすことに成功した。(通常の会話は60-70db)スピーカが電気信号を音に変換するのと同様に、その逆の過程である音を電力に変えるプロセスも可能である。このような高効率な音電変換デバイスは、携帯電話の充電の他、高速道路の防音壁や、車の通過音から電力を取り出すことができる。このシステムをさらに発展させれば、一般電力系統へ付加できるだけの電力を取り出すことも期待できる。

Freescale社:きめ細かな動作検出が可能で低消費電力な新加速度センサ発売

2010.09 海外産業動向

東京でFreescale社のセミナーが開催され(9月14日)、従来より低消費電力で高分解能なスマート3軸加速度センサが発表された。信号処理回路を含むモーション検出用加速度センサは、ゲーム、スマートフォン、ナビゲータ等に大量に供給されている。Freescale社によると、ユーザニースとして大きく二つあり、電池寿命を延ばすための低消費電力化とより繊細なモーションの識別(傾き、ゆさぶり、衝撃、振動、落下等)である。

新しいFreescale社の加速度センサは、単にゆれを検知するだけではなく、どの方向から力が加わったのかも検知することができる。これによってよりきめ細かな動作の検出が可能となり、例えば、投げ縄やむちを振るような動作も再現できるようになる。Freescale MMA845xQは10-14bit処理回路、超低ノイズで100μ-gの分解能を備える。さらに低消費電力:1.8μAはバッテリ寿命を延ばす。