2010年11月26日金曜日

自動車用MEMS売上2010年は過去最高を更新の見通し(iSuppli)

2011.11 海外産業動向
http://www.techeye.net/hardware/automotive-mems-sensor-market-to-exceed-record-shipments-in-2010
 自動車用MEMSの売上は2009年の$501.2Mに対し2010年は32.1%アップの$662.3Mに達し過去最高(2007年640M)を更新の見通しである。
 これは2009年が大きく落ち込んだのに対し、明るいニュースである。2014年まで13%の成長が続く見込みである。この成長の要因を探ると、自動車の姿勢制御システム(ESC)、タイヤ空気圧モニタ(TPM)用のセンサの拡大があげられる。ここで用いられているMEMSセンサは、他のアプリケーションにも拡大し、ゲーム機コントローラ、iPod、Segways等に搭載されている。しかし最も大きな用途は、自動車の安全制御システムにあると考えられる。この安全システムは最初に米国と欧州で採用された。これはオーストラリアやカナダにも広がりを見せ、将来韓国、日本にも拡大する見込みである。
 自動車用MEMS拡大のための新しいセンサも開発中である。車内環境制御のための空気質モニタやナイトビジョン(赤外線カメラ)、リアビューカメラ用MEMS発振機等である。また駐車時に車両の傾きを検知する加速度センサの採用の動きもあるが、これは現在継続検討されている。

MEMSマイク特許戦争:Analog Devices社がKnowles社に勝つ

2011.11 海外産業動向
http://www.marketwatch.com/story/analog-devices-wins-mems-microphone-patent-case-2010-11-22?reflink=MW_news_stmp
 国際貿易委員会はMEMSマイクの特許係争で、Knowlesに対し、Analog Devices(AD)の請求に従うよう裁定を下した。
 裁判官はKnowlesの特許は無効と結論付けた。その結果ADのMEMSマイクの輸入、販売は許可されることになった。ADの副社長の談話「ADは2008年に最初にMEMSマイクを市場に送り出した。ADはサイズや音質において最高の品質のマイクを供給してきた。我々は今回の判決に満足している。」この件とは別にADはMEMSマイクの製造方法におけるウェハ固着防止方法に関し、Knowlesを特許侵害で訴えている。
 AD社のiMEMSマイクは高音質で知られている。世界の設計技術者はiMEMSのプロセス技術の汎用性を良く知っている。これらの技術がモーションセンサやマイクに応用されているのである。ADの集積化技術はMEMSマイクと音響処理ASICと集積化させて最高の性能をもたらしており他社を凌駕するものである。

Discera社:精度10ppmのSi発振器を車載、無線機器用途へ展開

2010.11 海外技術動向
http://www.businesswire.com/news/home/20101122005697/en/Discera%E2%80%99s-Silicon-Oscillators-Deliver-10-ppm-Accuracy
 Discera社はUC.Berkelyのスピンオフベンチャーとして2001年創立され、Si発振器のベンチャーとして知られている。同社は誤差10ppmの高精度品とプログラム可能なSi発振器を発表した。
 この精度はSi発振機としてこれまでの最高レベルで、小型化が要求されている車載、民生機器、パソコン、ビデオ、無線機器へのの搭載を狙う。本製品はサイズ2.5x2.0mm、周波数150MHz、温度範囲-40~85℃で10ppmの精度を確保している。これまでのMEMS発振器と比較して2倍以上の信頼性、水晶発振器と比較して20倍以上の耐衝撃性、耐振動性を備える。
 DisceraのCEOであるDiamond氏は、「他社のMEMS発振器の精度は100ppmに対し、Discera社は10ppmを達成した。これによって他社を圧倒した。さらに温度特性が注目されるべきで、小型化に加えて85℃においても動作が保障されている。また実装性においてもあらゆる水晶発振器の置換えが可能である。動作電圧1.7~3.6V、周波数は1~150MHzまでプログラム可能、動作温度は-40~105℃、納期は2~3週間である。価格は10万個で$0.48である。

2010年11月22日月曜日

動き感知電源いらず、変形で電圧発生(クラレ)

20101119 日経産業新聞 1

 曲げると電圧を発生する特殊素材を使い、電源がなくても物体の動きを感知する変形センサーをクラレが開発した。特殊素材は炭化水素系の重合体で、ゴムのように柔らかく、曲げるとイオンが移動して電圧を生じる。曲げ方の強弱で電圧は0~3ミリボルトと変化し、曲がったままでも一定の電圧を発生し続ける。この素材に銀ペーストの電極をはさみセンサーとした。胸に張り付ける心拍センサーや、握る力のセンシングをするゲームコントローラー等の用途を見込んでいる。

2010年11月19日金曜日

MEMS慣性センサの見通し:Kionix社CEOインタビュー

2010.11 海外産業動向
http://www.digitimes.com/news/a20101117VL200.html
 Kionix社は1年前ロームに買収されたところだが、現在も加速度センサの有力メーカである。最近同社は民生機器用に開発された新しいジャイロスコープと加速度センサを発表した。同社の今後のMEMSセンサの展開についてCEOのGregory Galvinにインタビューをする。
Q:新MEMSジャイロスコープの最も重要視しているアプリケーションは?
A:主要市場はゲーム市場だ。手の動きを検出するハンドセットに注目している。ただこれがジャイロの最大の目標とは考えていない。次世代の車載制御や医療機器向けに注目している。
Q:2003年に既にKionixではジャイロスコープを開発している。最近開発したMEMSジャイロとの差は?
A:前の製品は自動車、産業機器、ナビゲーション用であった。サイズや出力が大きく、1軸タイプで民生機器用には向いていなかった。今回発表した新ジャイロは2軸、3軸を揃え、小型、低消費電力化を達成している。
Q:新ジャイロで車載や医療等、民生機器用以外も狙う計画は?
A:当面は民生用だが、将来他の市場に展開することも考えている。
Q:Kionixは加速度センサ市場で成功を収めた。Kionixが最近発表した新3軸加速度はこれから数年の間に主要製品となるか?
A:新3軸加速度は多くのアプリに対応するもので、さらなる加速度の事業拡大に寄与するであろう。3大アプリとして携帯電話、ゲーム、車載安全システムを計画している。
Q:加速度センサの競争は激しさを増している。Kionixはどのような差別化戦略を持っているか?
A:確かに競争が激しくなっている。特に民生分野で低価格化が進んでいるので、我々は、製造コストの低減に努め、コスト競争力で勝負する。
 加速度センサは年間20%の割り合いで低価格が進んでいる。しかしこれから数年は、低下率に歯止めがかかるのでは。戦略として、最近は高性能化は飽和し、小型低コスト化ばかりになっている傾向がある。しかしそれも限界が近づいており、低価格化のペースが下がるのでは。ゲーム機用市場競争に打ち勝つにはいくつかの要素がある。価格はその一つであろう。これからはユーザにとっての使いやすさも要因になるだろう。エンドユーザは落下防止や人の動きの再現等様々なニーズを持っている。それらのニーズに対していかに使いやすいデバイス供給できるかである。
Q:KonixのMEMSセンサ売上の割合はどうなるか。ジャイロは民生用に安定した売上が期待できるか。
A:現在MEMSセンサでは加速度が100%だ。2011年度にはジャイロの売上が伸びて全体の15-20%になるよう計画している。
Q:Kionixのビジネスモデルは全部自前か?アウトソーシングする計画は?
A:現在はすべて自前だ。ただ生産効率を上げるのに、有効な方法があるかこれからも調査していく。
Q:MEMS市場全体に対してどのような見通しを持っているか?
A:2011年はゲーム用ハンドセット向けが大きく伸びる。他にiPadやネットブックが有望であろう。やはり携帯機器分野でのモーションセンシングが最大の市場となるであろう。健康増進分野(フィットネス)も興味深い。MEMSは今後も成長が期待できる分野として取り組んでいくつもりである。

2010年11月17日水曜日

つくばナノテク研究拠点、経産省、投資前倒し

20101117 日刊工業新聞 2

 経済産業省は「世界的産学官連携研究センター」と名付け、ナノテク研究に集まった研究者や学生が研究や議論できる施設を、筑波の産業技術総合研究所内に建設・整備する予算を10年度補正予算に盛り込んだ。企業と大学、研究機関の研究者が機器や施設を共同利用する場で、筑波大、東京理科大、芝浦工業大、ニューヨーク州立大、スタンフォード大が参加予定。

2010年11月16日火曜日

「発電床」薄さ1.5㎝、価格抑え、施工も容易(東リ)

20101116 日経産業新聞 1

 人が歩くと、カーペットに組み込まれた圧電素子が振動を電気に変換する、発電床の新製品をインテリア大手の東リが開発した。慶應義塾大学発ベンチャーの音力発電(神奈川県藤沢市)と共同開発した。床材に発光ダイオードを組み込み、暗い場所での非常口誘導などへの使用を想定している。

情報をエネルギーに変換、「マックスウェルの悪魔」再現

20101116 日刊工業新聞 26
 自律的に動くナノマシン等に応用でき、微細加工技術により情報をエネルギーに変換するシステムにつながる実験に東京工業大学の佐野雅巳教授、中央大学の宗行英朗教授らが成功した。熱力学第2法則は温度差があればエネルギーを取り出せるとする基本法則で、マックスウェルの悪魔は測定に応じてシステムを制御する仮想的な「悪魔」がいると、温度差がなくてもエネルギーを取り出せ第2法則を敗れるとするもの。近年、悪魔がが情報を処理するのに必要なエネルギーを含めれば同法則が成り立つことが分かったが、これを実験で示されたことはこれまでなかった。今回の成果で、熱揺らぎを情報として利用すればエネルギーに変換でき、薬を運ぶ生体モーターなど、自律的なナノマシン開発につながると期待されている。

2010年11月12日金曜日

Invensense社:3軸加速度と3軸ジャイロを1チップに集積化

2010.11 海外産業動向
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/4588206452/articles/small-times/nanotechmems/industry-
 InvenSenseは、3軸加速度と3軸ジャイロを同じSiチップ内に集積したチップを開発した。さらにこの集積型チップに3軸電子コンパスと9軸モーションセンシング信号処理チップを合わせたモジュールを開発した。
 モーションセンサは、民生機器分野で大きく重要を伸ばしており、スマートフォン、iPAD、TVリモコン、ゲーム用ハンドセット、デジカメ、ビデオカメラ等で応用が進んでいる。これらのアプリにおいては、例えば手の細かい震えまで再現できるように、さらに高精度なモーションセンシングが要求されている。また最近、メーカの供給能力不足もあり、市場の伸びが緩んでいる。
 Invensenseの加速度/ジャイロ6軸集積型センサの特徴は、加速度とジャイロ間の軸調整が容易にできて検査工程が簡略化されるる。またパッケージが小型化されるので低コスト化につながる。さらに3軸電子コンパスを含めた総合的なモーションセンシング信号処理アルゴリズムにより、高精度化され、市場のニーズに答えることができる。
 このセンサは現在サンプル出荷可能な状態である。

オムロン:MEMSをモバイル機器用へ展開

2010.11 海外産業動向
http://www.eetimes.com/electronics-news/4210691/Omron-crafts-MEMS-for-mobile
 オムロンのこれまでのMEMSアプリは産業機器、医療機器が中心であった。今後はここで蓄積された技術を生かしてモバイル機器やグリーンデバイスを中心に展開していく。
 特に圧力センサ、RFスイッチ、赤外線画像センサでスマートフォン、ナビゲーション、ビルオートメーション市場を狙う。例えば圧力センサはこれまで産業機器や血圧計が中心であった。この圧力センサチップの裏面をウェハ接合を用いてSiで塞ぐことによって絶対圧センサができる。これをスマートフォン又はパーソナルナビゲーションに組み込むと、自分がビルの何階にいるかを検出できる。またRFスイッチもスマートフォンへの採用を目指す。
 赤外線画像センサは、室内での人の位置を、静止、動作中を問わず検出可能で、それによって空調をきめ細かく制御して省エネルギーにつなげる。

2010年11月10日水曜日

オムロン・STマイクロが協業

20101110 日経産業新聞 4

 オムロンとSTマイクロエレクトロニクスは電子式ガスメータ向けモジュールの開発で協業する。オムロンがMEMSフローセンサーを、STマイクロエレクトロニクスがセンサーを駆動するICをそれぞれ担当する。

2010年11月9日火曜日

微小振動で発電、日本にも波(米、エンオーシャン・アライアンス)

20101109 日経産業新聞 3
 エネルギーハーベスティングの電子部品で同アライアンスの技術が事実上の標準になりつつある。電池不要なスイッチとしての導入事例が多く、部品同士の接続性や信号送受信の無線技術を磨いている。住設や電子部品を中心に参加企業は160社、製品群も600となっている。評価キットの出荷は日本向けが一番位多く、日本でも採用の動きが加速するだろう。(同アライアンス会長兼CEOグラハム・マーティン氏)

MEMS関連製品を拡充(ローム米子会社)

20101109 日刊工業新聞 9

 ロームの子会社、米カイオニクスがMEMSを活用した製品を拡充した。3軸加速度センサーと民生用2軸ジャイロスコープの出荷を開始する。

2010年11月8日月曜日

理想の「熱電変換」目指して、工場廃液から発電

20101108 日刊工業新聞 15
 工場排熱等の捨てられているエネルギを活用できる熱電変換技術の開発が活発化している。導体の両端に温度差があると電圧が生じるベーゼック効果を利用するもので、課題は幅広い温度域に対応でき、安価で高い熱電性能を持つ材料の開発である。無機化合物では産総研の舟橋良次主任研究員が、コバルト系酸化物のモジュールとテルル化ビスマスのモジュールを重ねたカスケード型を開発した。有機化合物では山口東京理科大の戸嶋直樹教授はプラスチック材料を探求し、有機無機のハイブリッド材料を模索している。両者に共通なテルル化ビスマスは熱電変換では評価されているが、テルルは毒性があり、希少金属で高価なことが難点であり、脱テルル化ビスマスを目指している。

2010年11月5日金曜日

STMicroelectronicsとオムロンがガス流量センサを共同開発

2010.11 海外技術動向
http://www.newelectronics.co.uk/article/28993/STMicroelectronics-and-Omron-collaborate-on-flow-sensor-technology.aspx
 STとオムロンはガス流量センサを共同開発したことを発表した。これはSTが開発中のガス流量計に用いられる。
 このデバイスは、オムロンが保有するMEMS流量センシング技術とSTが開発してきたアナログ制御技術を含む。センサ素子内部で温度や圧力の変化を補償する機能を有し、ガス成分の変化の影響も補償することができる。またガス流量計の国際規格である埃の影響の除去する機能も兼ね備えている。このセンサは7.2x8.6cmの回路基板に実装され、高精度と低消費電力を実現している。また内蔵するバルブ駆動用モータの制御の他、温度や振動の補償機能も搭載されている。同回路基板には、パワー制御IC、液晶駆動回路、温度センサ、加速度センサ、発振回路、モータ制御回路も搭載されている。オムロンのマイクロデバイス事業部長である関口義男は「将来の市場拡大が期待されるガス流量計の分野において、STとオムロンは新たなコラボレーションによってトップに立つことができた。」と語った。

MEMS Exective Congress速報:MEMS市場予測(~2014年)

2010.11 海外産業動向
http://www.eetimes.com/electronics-news/4210412/Analysts-split-on-MEMS-growth-rate-forcasts
 11月3日、4日アリゾナ、スコットデールでMEMS Exective Congressが開催された。その中で、市場予測に関するセッションが行われ、YoleとiSuppliで意見が分かれた。
 MEMSデバイスの市場は2010年は、7000億円に達する見込みである。今後5年間は、二桁成長するということで両者の予測は一致した。2014年の市場に関しては両者で異なり、Yoleは$16billion、iSppliは$10billionと予測した。この差が生まれた要因をあげると、Yoleが電子コンパスを含めたのに対し、iSppliは含めていない。マイクロフルイディクスに関し、Yoleはガラス基板、ポリマー基板上に作製されたものを対象にしたのに対し、iSppliはシリコン基板上を対象にしている。さらにiSppliの予測では、ゲーム機器用市場は飽和し、かつ単価が急激に下がるとしている。
 両者に共通した見通しとして、有望なMEMSデバイスの市場が急成長すると予測している。その代表は光MEMSで特にピコプロジェクタが民生機器に広がり、大きな成長を遂げるとしている。他に医療機器用センサ(診断用センサ、ドラッグデリバリー用センサ)は年率30%、またビル省エネ用センサは年率25%で伸びると予想されている。

2010年11月4日木曜日

チャレンジ!新部品、車体姿勢検知センサー(エプソントヨコム)

20101104 日経産業新聞 7

 エプソントヨコムは、自動車の走行安全装置向けに、水晶を使い精度を向上したジャイロセンサーを投入する。自動車の横滑りを検知する「ヨーレートセンサー」と、横転を検知する「ロールセンサー」の2タイプ。この市場はボッシュが先行し、STマイクロエレクトロニクスも参入しており、競争激化が予想される。自動車への横滑り防止装置(ESC) 搭載義務付け(EU,アメリカ、カナダ)による市場拡大を見込んでいるが、シリコン素子を使った競合品との価格競争が課題。

2010年11月1日月曜日

環境発電部品、一斉に投入(村田製作所)

20101101 日経産業新聞 1

 エネルギーハーベスティング(環境発電)向けの電子部品について、村田製作所が4種類の製品を実用化し、産業機械や自動車など幅広い分野に向け投入する。光発電では、オフィスの照明程度の光で発電する太陽電池とコンデンサーを組み合わせ、数ワット程度の電力を供給する。振動発電では、2枚の基板の静電気量の変化で発電し、手を軽く振る程度の振動で100μワット程度を発生する。温度差で発電する熱電変換素子と、圧力を電気に変換する圧電素子を搭載した部品は開発済み。これらは消費電力の小さな無線部品やセンサーと組み合わせたモジュールとして使い、電源や配線が不要なセンサーネットワークを構成できる。