2011年7月28日木曜日

MEMSが築くスマート生活の未来-上-カメラ・車、技術の要

20110728日経産業新聞1
 MEMS技術が電子部品を一足飛びに微細化、高性能化し、デジカメや自動車など様々な製品に組み込まれ、その常識を覆そうとしている。
 デジカメの手振れ防止用に活用されているのがジャイロセンサー、その世界シェアトップのセイコーエプソンのジャイロセンサーには6つの水晶片が組み込まれている。一片が70マイクロメートルの水晶片がカメラのわずかな傾きを検知する。MEMS技術により世界最小レベルに仕上げ、世界シェアトップとした。
 薄膜形成技術とMEMS技術を融合し、新たな市場を切り開こうとしているのがパナソニックの自動車横滑り防止装置(ESC)用の角速度センサー。ESCは欧米では義務化されており、日本でも1210月から義務化される。角速度センサーは車の傾きを検知するもので、シリコン製センサーの上に圧電薄膜を重ねて形成し、感度は圧電薄膜が薄いほど上がる。同社のセンサーはMEMS技術を活用し、厚さ10マイクロメートル以下の圧電薄膜を形成し、感度を他社に比べて10倍とした。
 米ノウルズ・エレクトロニクスの小型マイクチップはMEMS技術により1辺を1ミリメートル以下にした。このため、マイクチップを電話に2個組み込み、話し手の音と周囲の雑音を別に拾い、雑音を振り分けることで明瞭な通話が可能となる。
 MEMSについて日本は技術を持ちながら、的確な時期に的確な規模の投資ができず、欧米勢に出遅れている。例えば、ウエハーサイズで日本は欧米の半分、単純計算ではコストは5割増し。MEMSには微細加工技術に加え深堀技術など独特のノウハウも必要で、中韓勢はなかなか入り込めていない。電子部品市場では台湾や韓国に対し日本は劣勢だが、センサーなどでは世界市場でも存在感は強い。MEMSは日本のものづくり再興の切り札となるかもしれない。

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