2012年11月27日火曜日

「ナノ電車」最短で薬物運ぶ、流体でデバイスに活用(産総研等)

20121128日刊工業新聞27面

 マイクロ流体デバイスに活用できる、薬物やDNAという物質を運んで狙った場所で放出する「ナノ電車」と名付けた複合体を、産総研が大阪府立大学と共同で開発した。直径10ナノメートルのカーボンナノチューブ(CNT)の表面に、内部に物質を蓄えられるリポソームという球状分子を結合する。リポソームは温度を上げると形状が変化し内部の物質を放出する。この複合体に電圧をかけると毎秒700マイクロメートルで移動し、レーザー光を当てるとCNTが発熱して物質を放出する。今後は運搬性能を高め、目的の場所で化学反応が始まる流体デバイスを目指す。

めざせ減量、髪に結び、碁石状の活動量計、スマホ表示(エムティーアイ)

20121127日経産業新聞1面

 3次元加速センサーを搭載し、髪に結び付けて活動量を検知してスマホに近距離無線通信で送付する「マイクロタグ通信活動量計」を携帯電話サイト開発大手のエムティーアイが開発した。減量を目指す女性向け。

2012年11月26日月曜日

スマホ用デジタル気圧センサー、アルプス電気が参入

20121126電波新聞1面

 アルプス電気はこれまでの世界的に高いシェアのHDD用アナログ気圧センサーに加え、スマホ用デジタル気圧センサーに参入する。温度補正機能付きで3ミリ角。

2012年11月24日土曜日

エネルギーハーベスタ市場2017年に200億円へ(Yole)

海外産業動向
http://www.i-micronews.com/upload/pdf/ACMEMStrendsOct%202013.pdf
 エネルギーハーベスターの市場は、ここ5年の内に約200億円のレベルに成長すると考えられている。これを牽引するのはビルや工場向けのワイヤレスセンサネットワークシステム(WSN)の成長である。低消費電力の回路や通信技術の発展が従来のバッテリーをエネルギーハーベスタに置き換えることを可能にしている。ビル向けのWSNでは光発電、熱発電が主に用いられるのに対し、工場向けでは振動発電、熱発電が用いられている。タイヤ空気圧モニタ(TPMS)に関してバッテリー搭載型が当分続くであろうが、最終的にはMEMS振動型に置き換わると考えられる。
 出力が数十マイクロワットから数十ミリワットのエネルギーハーベスタの当面の市場予測がなされた。主要なアプリケーションはビル用WSNで特に配線不要のメリットを生かした既築ビルへのWSNの設置が伸びると考えられる。
エネルギーハーベスタといえども2次電池は必要である。新しい2次電池として薄膜2次電池やスーパーキャパシタが開発されており、その他の低消費電力用電子部品の開発も盛んで、代表的な企業としてEnOcean社はいち早くエネルギーハーベスターの事業化に先行して、さらに事業を拡大している。
 最初に実用化されたエネルギーハーベスタは電磁発電である。押しボタン式のスナップ動作で電磁誘導発電を行い、数メートル先へ電波を送ることができる。続いて商品化されたのは光発電、熱発電で配管や窓に取り付けるタイプである。
 2011年にはビル向けに200万個のエネルギーハーベスタが出荷された。ここ5年以内に出荷は10倍に増えると予想される。EnOceanはビル向けに継いで家庭用WSNの需要が増えるろみている。かつてMEMS振動発電型エネルギーハーベスタの最初のアプリと考えられたTPMSは現在のバッテリーで用をなすため、当面MEMS振動発電の出番はなさそうである。現在はTPMSはリムに取り付けられるため、自動車会社が取り付けているが、将来はさらに機能を高めてタイヤの中に取り付けられる見通しである。そうなるとTPMSはタイヤメーカが取り付けることになる。この時圧力以外に温度や他のセンサも加わってスマート化される予定で、ここでMEMS振動型のチャンスが生まれる可能性がある。また車載ではTPMSの他にエンジンの燃料消費率モニタが開発中で、ここでもエネルギーハーベスタのチャンスがある。他のアプリでは、医療用人体埋め込みデバイス、特にペースメーカーへの搭載が期待される。
 ビル向けに継いで需要が確実視されているのが、工場用WSNである。製造設備には大きな振動、高温プロセス装置が多くエネルギー源が豊富である。代表的な企業として熱電発電のMicropelt社があり、薄膜で微細加工された熱電変換素子を武器に市場拡大を図ろうとしている。伸び率という面では熱電型が最も大きいと考えられる。

2012年11月23日金曜日

ポータブル型DNA解析装置、細胞採取からの全工程60分(NEC)

20121123電波新聞2面

 NECはポータブル型DNA解析装置を開発した。解析チップ(消耗品となるプラスチック板)と試薬パッケージを組み合わせ、従来のぺピットを用いた作業を不要とする。DNA解析プロセスは①細胞の採取、②DNAの抽出、③DNAを増やすPCR増幅、④DNAの大きさを調べる電気泳動、⑤個体差を判別するSTR解析からなり、これらのプロセスを一貫して行うことができる。今回の評価器では全行程を60分で完了し、一体化した装置はスーツケース大まで小型化した。14年度の商用化を目指す。

2012年11月22日木曜日

無線センサーネット拡充、電池レス通信システム販売(ローム)

20121122日刊工業新聞8面

 ロームはドイツ・エンオーシャンが策定した環境発電用の超低消費電力無線通信の国際規格「エンオーシャン」準拠の電池レス無線通信システムの販売を開始する。押し込む動作で発電してオン・オフの信号を送信する照明用スイッチを想定。

チャレンジ!新製品、傾斜・振動センサー、高精度と低コスト両立(セイコーエプソン)

20121122日経産業新聞7面

 セイコーエプソンは水晶の微細加工技術を活用した産業機器向けのセンサー開発に注力している。傾斜計は1000分の1度、振動計は10マイクロGまで計測できる。従来の高層ビルや船舶など大型の物の計測には「機械サーボ方式」が主流だが、大型で高価格、設置にも専門技術者が必要だった。水晶振動子によるセンサーでは価格も機械式に比べて約4分の一、専門の技術者も不要。民生用の加速度センサーのシリコンMEMSに比べて測定のバラツキを約30分の一と高精度にできる。

2012年11月21日水曜日

路面状況や建物のひび割れ、小型センサー、常時監視、自ら発電、受信機に発信(千葉大、弘前大)

20121121日経産業新聞7面

 千葉大学の浅沼博教授と弘前大学の古屋泰文教授らは、わずかな振動の変化を捉えて路面状況や建物のひび割れを検知し、自家発電素子による給電で常時監視できる小型センサーを開発した。新センサーは2センチメートル四方で厚さが0.55ミリメートルの圧電素子で、無線発信機に繋がり無線LANの電波で送信し、磁歪材料によるコイルを使った発電で給電する。

2012年11月20日火曜日

スマートフォノ/携帯電話用部品、独自の新製品・技術で世界市場ターゲットに、新たな需要創出

20121120電波新聞4面

 電子部品メーカーはスマートフォン・携帯電話用部品の開発・拡充を強化している。スマホ用センサーでは、CMOSイメージセンサー、3軸加速度センサー、電子コンパス用地磁気センサー、ジャイロセンサー、デジタル気圧センサー、デジタル湿度センサー、照度センサーなどが搭載されている。気圧センサーはこれまでHDD用にアナログ気圧センサーが搭載されていたが、スマホ用では高度検知が可能なことからインドアナビゲーションが用途。白物家電や空調機器に搭載されていた湿度センサーも、スマホ用に従来の抵抗式に加え静電容量式が開発されている。

2012年11月16日金曜日

肌に張る化粧品、シートに針状の成分、日本写真印刷が開発


20121116日経産業新聞16面

 溶解性マイクロニードル技術を商品化し、微細な針状のヒアルロン酸をシート上に多数配置し、肌に貼って直接浸透させる化粧品を日本写真印刷が開発した。貼ると体温や水分で数十分で溶け、表皮に浸透する。痛みは無く、口からの摂取より効果的という。女性が寝る前に目じりなどに貼る利用を想定している。

2012年11月14日水曜日

マイクロRNA、数十分で簡単に検出、電源不要の小型装置(理化学研究所)

20121114日刊工業新聞19面

 マイクロ流路によるマイクロRNA(マイクロリボ核酸)を短時間で検出する装置を理化学研究所が開発した。マイクロRNAは、タンパク質合成の設計図を持たないが遺伝子発現の調整などに関与し、がん早期発見のマーカーとして注目されている。微細な流路にマイクロRNAを含んだ溶液を流し、密閉した微小空間にマイクロRNAとだけ結合するDNA断片を置き、検出する。電源を使わず、わずかな試料から数十分で検出でき、持ち運びできる。今後、装置の簡素化や検出感度向上に取り組み、実用化を目指す。

スマホ向けマイクに参入(TDK)

20121114日刊工業新聞8面(電波新聞3面にも掲載)

 TDKはスマートフォン向けMEMSマイクロホン市場に参入する。小型化と高性能化を追求し、2014年には月産1000万個の販売を見込んでいる。

2012年11月9日金曜日

欧で微量血液検査システム販売、伊メナリーニ社と提携(ローム)

20121109電波新聞1面

 ロームはマイクロTAS技術による微量血液検査システムを欧州の大手製薬会社メナリーニグループを通じて欧州で販売する。マイクロTASは微小チップ上に流体デバイスを集積し、科学捜査を短時間で効率的に行うもの。

半導体向け先端微細化周辺材料、反射防止コーティング材など、開発を加速(日産化学)

20121109電波新聞4面

 半導体微細化の進展に対応した先端微細化周辺材料の開発を日産化学が加速している。反射防止コーティング剤「BARC」はシリコン基板の加工にあたりレジストの下に塗布され、露光時の光の反射による線幅の乱れを防止するもので、同社は東アジア地区でトップシェア。マルチレイヤープロセス用材料、EUV(極紫外線)用材料も取り扱う。

CNT密度100倍素子、搭載ICを開発(米IBM)

20121109日刊工業新聞25面

 シリコントランジスタのナノレベルまでの微細化は限界とされているが、これを超える可能性の新技術を米IBMワトソン研究所が開発した。1万個以上のカーボンナノチューブ(CNT)のトランジスタから構成された集積回路を開発したもので、数ナノメートルレベルの超微細回路線幅で、低コストでチップを製造する手掛かりになる。開発チップは半導体CNTにより電気的ON/OFFができ、トランジスタ内のシリコン製チャネルをCNTに置き換えられる可能性を持つ。

哺乳類の内耳電位、無線電源に活用、米MITが成功

20121109日刊工業新聞25面

 哺乳類の内耳に自然に存在する電位から電気を取出し、小型の無線送信チップの電源として利用することに米マサチューセッツ工科大学(MIT)が成功した。耳の奥にある蝸牛に電極を埋め込み、無線チップと接続し内耳の化学データを無線送信した。蝸牛は内部の空洞に膜を隔ててカリウムイオンとナトリウムイオンが存在し、そのバランスの違いから神経信号を伝達するための蝸牛内電位を発生させている。今回、1ナノワットの電力を5時間取り出すことが出来た。

大気中で有機半導体作成、スタンプで回路印刷、コスト低減に期待(産総研など)

20121109日経産業新聞10面

 大気中で基板の上に電子回路を作る技術を産総研の長谷川達生副研究センター長と高エネルギー加速器研究機構などが開発した。シリコン製の基板の表面を水をよくはじく様に処理し、有機半導体を溶かしたインクを回路の形に加工したゴムに吸わせ、基板に5分間以上押し付けると、有機半導体が基板に印刷される。3年後の実用化をめざし、ディスプレイの制御に使う薄膜トランジスタの実現を目指す。

2012年11月8日木曜日

ナノの空洞で化学反応、先端人京都大学准教授植村卓史氏

20121108日経産業新聞11面

 多孔性金属錯体という一辺が1ナノメートル角の立方体が整然と並んだ新材料が注目を集めている。狭い空間で化学反応を起こす新たな試みで、基礎科学の印象が強いがさまざまな応用が期待されている。その一例が多孔性金属錯体の内部に特定の気体が入ると構造がわずかに変化して発光する「ガスセンサー」。動力源となる物質を詰め込み、MEMSへ組み込むアイデアもあり、多孔性金属錯体から水をはじく物質を少しづつ放出して水面を動くモーターが発表されている。この研究の中心となっているのが京都大学准教授の植村卓史である。

微細気泡、実用化に期待、日本発、国際標準化を推進(微細気泡産業会)

20121108日刊工業新聞7面

 ナノ・マイクロバブルと呼ばれる日本発の微細気泡技術の実用化を推進する一般社団法人微細気泡産業会(FBIA)が2012年7月に設立されている。ナノ・マイクロバブルはキューピーの低カロリー業務用マヨネーズや西日本高速道路のトイレ洗浄に実用化されており、今後は半導体や太陽電池の製造プロセス、大腸菌の殺菌灯幅広い応用が期待されている。FBIAは産総研と共同でナノ・マイクロバブル技術の国際標準化推進にも取り組んでいる。


横滑り部防止装置増産、栃木工場で1.2倍(ボッシュ)


20121108日経産業新聞14
 
 自動車の横滑り防止装置(ESC)の製造大手である独ボッシュ日本法人は栃木工場で生産が2割増しとなっている。ESC101210月から国内で乗用車への搭載が義務付けられている。

2012年11月7日水曜日

次世代センサー開発促進、独社の薄膜成長装置導入(旭化成エレクトロニクス)

20121107日刊工業新聞9面

 旭化成エレクトロニクスはドイツより化合物半導体製造用の薄膜成長装置を導入し、省エネ家電など次世代センサーの開発促進を目指す。同装置は有機金属などの薄膜材料を高温で反応させて基板上に製膜する。大面積や複雑な形状、研究ベースの試作から量産まで柔軟に対応できる。

2012年11月6日火曜日

シリコンウエハー、原子レベルで品質評価、超音波デバイス活用(新潟大)

20121106日経産業新聞1面

 シリコンウエハー上に超音波を検知する微細なデバイスを作製し、ウエハーを伝わる超音波の速度を調べることで、原子レベルの欠陥を調べる技術を新潟大学大学院の後藤輝孝教授らが開発した。原子レベルの欠陥は原子空孔と呼ばれ、シリコン結晶に原子が欠けた状態で、半導体の製品不良の原因となる一方で、特定の電気特性を持たせる、プラスマイナス両面の影響がある。ウエハー上に半導体製造技術で無数の超音波デバイスを作製し、絶対零度まで冷やして0.5ギガヘルツの超音波を当てる。シリコンは冷却により柔らかくなるが、原子レベルの欠陥が多いほど柔らかくなり、超音波の伝わる速度が遅くなることを検知する。原子レベルの欠陥を定量的に調べられる。

業界初の9軸MEMSセンサー、3.0x4.5ミリの超小型(独ボッシュ・センサーテック)

20121106電波新聞3面

 ドイツのロバート・ボッシュ子会社のボッシュ・センサーテックは、12ビット加速度計、16ビット解像度ジャイロスコープ、地磁気センサーと3種類の3軸センサーを集積した絶対方位センサーを出荷した。拡張現実(AR)、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)、位置情報サービス、スマートフォン向け屋内ナビゲーション、遠隔制御用HMIなどの利用を想定。3.0x4.5x0.95ミリメートルの20ピンLAGパッケージで提供する。

2012年11月5日月曜日

ジャイロセンサー開発、車載向け、15年めどに商品化(TDK)

20121105電波新聞3面

 TDKは振動設計技術を駆使し、振動に強く高精度なMEMSジャイロセンサーを開発した。シリコンベースに圧電膜を形成し、小型化に加えて高温度にも耐え、エンジンルーム内の搭載を可能としている。自動車の横滑り防止システムでのヨーレート検知、ロールオーバー検知など、15年をめどに商品化する。

2012年11月1日木曜日

北大の化学物質検査チップ、毒性判定時間三分の一に、細菌の遺伝子変異を活用

20121101日経産業新聞11面

 北海道大学の谷博文教授らは細菌の遺伝子変異を活用し、化学物質の毒性を判定する小型チップを開発した。3センチメーター角のシリコーン板やゴムに700マイクロメートル角の穴や溝を刻み、穴の底に大腸菌を取り付け、溝から流し込んだ化学物質の液体との反応を検知する。大腸菌は遺伝子操作により、化学物質が作用して遺伝子が変化すると発光するようにしており、光の検出で遺伝子変異の程度を分析する。従来法では試験官などで菌を培養し、化学物質を加えて反応を見ていた。開発チップでは穴や溝の狭い隙間で反応させるので化学物質が少なくて済み、反応結果が出る時間も半分から三分の一になる。医薬品原料などの安全性試験、河川の汚染物質検出に活用できる。