2010年10月29日金曜日

MEMSジャイロ:新たな戦いへ

2010.10 海外産業動向
http://www.i-micronews.com/lectureArticle.asp?id=5711
 MEMSモーションセンサは、民生機器用を中心に急速に需要を拡大している。特にMEMSジャイロスコープが伸びており、競合する企業に変化が見え始めている。
 スマートフォン用3軸ジャイロスコープの競争は今始まったばかりであり、現在の主な用途はやはりゲーム機用である。Yoleによると2010年のMEMSジャイロの市場は$418Mで、そのうちゲーム機用が$162Mを占める。すでに5千万個以上のWiiモーションプラスが販売された。この中には、Invensense、エプソントヨコムのジャイロが搭載されている。だがこれは始まりにすぎない。本年9月にはソニーがモーション機能を付けた新製品PS3の販売を開始した。ソニーは計9軸のモーションセンサ(加速度、ジャイロ、電子コンパス)を搭載した。ここでは、9軸に対応した信号処理アルゴリズムが開発され、人間の動きをより詳細に再現している。任天堂は携帯ゲーム機DSにモーションセンシング機能を付けた新DSを2011年2月に発売予定である。
 Yoleは次の2社の動きに注目している。ソニーはこれまで2軸のMEMSジャイロを開発し、既にソニーのゲーム機や小型のデジタルカメラに搭載されている。ソニーはMEMSジャイロでは新顔であるが、他社のデジタルカメラにも搭載されている模様である。これはすでにソニーがMEMSジャイロの大きな供給元になっていることを意味する。一方すでにMEMSジャイロでは大手のパナソニックが、ゲーム機や携帯電話への搭載を目指して積極的に攻勢をしかけてきた。Yoleの予測では、来年発売の任天堂モーションセンシング付DSに採用される見通しである。
 MEMSジャイロのこれまでの主要メーカは、STMicro、エプソントヨコム、Invensenseであったが、最近Kionix、Boschも参入しており、さらにソニー、パナソニックも加わり、競争が激化する模様である。これらの情報は来月Yoleから発刊する報告書に詳細が述べられる予定である。

Ventmark Technology Solutions社:TSVを用いない新3次元積層構造開発

2010.10 海外技術動向
http://www.electroiq.com/index/display/packaging-article-display/5625661505/articles/advanced-packaging/packaging0/integration/die-stacking/2010/10/vertical-die-stacking-goes-3d-without-tsv.html
 Ventmark Technology Solutions社のAndrew Smithは小型化のための新たな3次元チップ積層技術を発表した。特徴は現行の貫通配線技術(TSV)を使わずに、積層配線する技術である。
 パッケージング技術に関し、これまでSMT、COB、パッケージonパッケージ(POP)、TSV等様々な技術開発がなされ、小型化が進められてきた。今話題のTSVは高度集積化を実現できる技術であるが、必ずしも大きな実用化には至っていない。唯一CMOSイメージセンサでボリュームゾーンの成功例があるが、低コスト化、熱歪、検査方法等に課題があり、これらを克服していく必要がある。一方、中間配線板を介して上下にチップを実装する構造やPOP技術は、汎用的な材料、プロセスを用いるため小型、低コスト化が期待できる方法として開発が進んでいる。
 新たに開発したパッケージング技術は、Vertical Interconnect Structure(VI)と呼ぶパーツを用いる。これはチップが実装された二つの配線板を縦に積層化する時、スペーサと二つのチップ間の配線を兼ねる役目をする。(図参照)この構造はワイヤボンドを削減し、システムinパッケージを小型、低コストで実現できる技術である。VIはセラミック製でピン配置や配線は任意に設計可能である。またVIをAlNのような熱伝導率の高い材料にすることによって放熱性能も高められる。これらの特徴(小型、低コスト、高熱放散性、堅牢性)を生かしたVIパッケージの用途は、車載、人体埋め込みデバイス、携帯機器、ワイヤレスセンサ、エナジハーベスター、加熱を伴う機器等が考えられる。VIパッケージの最終形状はSMT用標準サイズになり、既存の回路基板に実装可能である。以上のようにVIはTSVを用いない低コスト3次元チップ実装として今後様々な用途に活用されていくであろう。

2010年10月28日木曜日

MEMS方式ディスプレー、省電力、液晶代替狙う(日立ディスプレイズ)

20101028 日経産業新聞 7

 日立ディスプレイズが開発したMEMS方式ディスプレーが注目されている。従来のLEDバックライト方式の液晶ディスプレーに対して消費電力を半分以下に抑えられ、動きの激しい動画の表示、色の再現性も高い。仕組みは、画素ごとにMEMS技術による微小シャッターを配置し、バックライトとして設置した赤青緑3色のLEDを切り替えて点灯し、このタイミングに合わせてシャッターを開閉する。アメリカ・ベンチャーのピクトロニクスの技術を導入、11年後半の量産開始を目指している。

2010年10月22日金曜日

STMicroelectronics社:太陽光発電システムにMEMS加速度センサ応用

2010.10 海外産業動向
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/6094961712/articles/small-
今は誰もが太陽光発電のメリットを認識している。最近、多くの太陽光発電システムの導入に伴い、その安全性と盗難の問題に関心が集まってきた。その課題に対する一つの解がMEMSセンサの応用である。必要な機能として、振動検出や盗難防止機能があげられる。対象は住宅向けの太陽電池インバータや太陽電池付き街灯も含まれる。
MEMSの新たなアプリとして新エネルギーシステムが注目されている。地震の多い地域に太陽光発電システムを設置する時は、地震によるダメージを配慮しなければならない。また台風の多い地域での風の影響も同様である。例えば住宅用で一般電力網に接続された太陽電池が損壊した場合は、放電が起こり火災が発生する可能性がある。安全のためには損壊が起こりそうになった時、その前に一般電力網から遮断する必要がある。一方太陽電池、2次電池を備えた街路灯は、地震等の天災が発生した時、フルパワーで非常灯としての機能を発揮しなければならない。以上の両方のケースにおいて、MEMS加速度センサが地震や強風のモニターで活躍しそうである。現在そのための開発が行われており、回路付き3軸加速度センサが機能することが検証されている。
●盗難防止
太陽光発電システムが遠隔地に設置された場合は、盗難がゆゆしき問題になる。MEMS加速度センサは、角度を検出することができる。もし誰かがパネルを移動させた場合は、角度検出機能によって移動されたことを検出し、必要な処置を自動的に行うことができて盗難防止につながる。

Freescale社:自動車安全システムのための先端センサ開発加速化

2010.10 海外産業動向
http://www.marketwatch.com/story/freescale-accelerates-automotive-safety-with-advanced-airbag-sensors-2010-10-19?reflink=MW_news_stmp
より安全な自動車の実現は、自動車産業発展のために不可欠であり、特に次世代のエアバッグシステムはその牽引役になるであろう。1987年から2008年の間に装着された前席用エアバッグのうち25780個以上が現在も使用されている。自動車メーカは、さらなる性能向上、低コスト化を目指して、開発を続けている。
Freescale社は安全性を高めるために新たな取組みを明らかにした。エアバッグ用インテリジェントセンサシステムMMA16、MMA26は標準的なインタフェースDSIを用いて、圧力、加速度、乗員検出、シートベルトセンサからの信号をエアバッグ動作系へ送信する。これらのセンサはFreescaleの次世代エアバッグ用センサ郡において主要な位置を占める。従来より、早く正確に衝突を検出するためにいくつかの新しい性能を備えている。X-Z軸検出、ダンプ制限機能付き慣性センサを出しているのはFreescaleだけである。このダンプ制限機能は衝突時の高周波や高調波の歪の影響を少なくすることができる。また2kHz以上の出力、4個のセンサを同じバス上に設定できる。これらの仕様は設計者にさらに機能の追加の余裕を与えることができるであろう。

Invensense社:ドバイに国際営業拠点設置

2010.10 海外産業動向
http://www.ameinfo.com/245877.html
ドバイシリコンオアシス(DSO)は、この地域の開発拠点として開発されている。MEMSモーションセンサで世界トップのInvensense社は、DSOに国際営業本部を設置した。
同本部ではエンジニアを抱え、米国以外の国:台湾、日本、韓国等のユーザに対して市場開発や製品サポートを行う。DSOの所長は言う。我々がこれまで開発してきたモーションセンサをよりグローバルに展開するため、国際拠点としてドバイを選んだ。ドバイ政府によるとDSOは優遇条件を設けて、ハイテク企業を誘致していくとのことである。

ナノテク研究深耕、米NY州立大と協定(産総研)

20101022 日刊工業新聞 27

 産総研とアメリカ・ニューヨーク州立大学ナノスケール理工学カレッジ(CNSE)はナノテクノロジーやエレクトロニクス分野で研究協力する覚書を結んだ。産総研は物質・材料研究機構、筑波大学と世界的なナノテク研究拠点形成を目指す「つくばイノベーションアリーナ」を進めており、CNSE IBM、東芝、東京エレクトロンなどが参画するナノテク拠点を持っている。

MEMS部品市場、再拡大へ、小型化加速で再編進む

20101022 日経産業新聞 4

 フランスのヨール・デベロップメントによるとMEMS市場規模は2007年以降の横ばいから、2010年以降は年率13%で成長する。民生機器・自動車に加え、医療・産業分野が伸びる。これは、シリコンウエハーの8インチ対応等の量産による加工コスト低下によるもの。小型化への技術革新も進んでいる。日本勢は慣性センサー分野で多機能品の開発と量産投資に後れを取った。MEMS部品の開発や量産は投資規模が大きく、市場成長が急激なので、企業の再編は進むだろう。

非接触で高精度3D測定、5μmレベルで部品の形状把握(ニコン)

20101022 日経産業新聞 1

 非接触式の3D測定器は高速で大量の測定点データを得られるが、プローブを当てて計測する接触式の精度1μm程度に比べ30μm程度が限度だった。ニコンは複数のセンサーを搭載した光学モジュールと5軸の同時制御システムを組み合わせ、5㎛の精度の3D測定器を開発した。センサー部は光が対象物に遮断された状態を測定するセンサーと、焦点があった部分の情報で測定する画像センサーを一体化した。自動車や航空機関連メーカーへの売り込みを図る。

3D化技術、日本勢に光明、巨額設備投資不要に

20101022 日経産業新聞 3
 半導体メモリー分野で、回路やチップを縦方向に積み上げる「3次元化技術」による低コスト・大容量化を目指す動きが高まっている。メモリで微細化を進めすぎると誤動作が発生する可能性があるが、確立した技術によるチップを何層にも積み上げ、層を貫く微細な穴を多数形成し、穴に酸化膜や電極を埋め込む。何世代も前の加工技術で、最先端の工場をしのぐ成果が得られる。東芝は「BiCS」技術を開発している。エルピーダもチップ間を高速につなぐシリコン貫通電極(TSV)の量産技術を開発している。

2010年10月21日木曜日

感度5倍の磁気センサー、医療機器向け(愛知製鋼)

20101021 日刊工業新聞 8

 愛知製鋼は感度が従来製品に比べて5倍の磁気センサー「高感度MIセンサ」を発売する。1ナノテラスの超微小な磁気を検知でき、電子機器や食品分野の磁性体混入検知装置、医療機器向けに販売する。

ジャイロセンサー、厳しい環境下でも正確(アナログ・デバイセズ)

20101021 電波新聞 4

 米アナログ・デバイセズ(ADI)は、市場に流通する製品では最も高い安定性と耐衝撃性を備える、高性能・低消費電力・デジタル出力付きジャイロセンサーの新製品を発表した。差動クアッド・センサー構造により強い衝撃や振動条件下でも正確な動作が可能。

「究極露光」EUV実用化へ、日本メーカー出遅れ

20101021 日経産業新聞 3

 半導体露光装置最大手のオランダASMLEUV(極紫外線)露光試作装置の出荷を始めた。早ければ2年後にも回路線幅20㎚前後の量産が始まる。一方、日本の装置メーカーは出遅れている。現在最先端の2030㎚の製造では露光を2回行う「ダブル・パターンニング」を行うが、工程増によるコストが2倍となるが、EUVでは1回で済む。量産用装置は推定1100億円で、1時間当たり100枚のウエハー処理で現状方式とコストが見合う。しかし、現状では光源出力が追い付いていない等、量産技術確立には課題が残っている。業界3位のキャノンは最先端開発から脱落し、残るはニコンのみだが、ニコンのEUV装置実用化は15年以降の方針である。

2010年10月20日水曜日

世界3強時代が到来、変わる半導体業界地図

20101020 日経産業新聞 3
 半導体の微細化進展に伴い、システムLSIを手掛ける日本企業は製造を外注に移行し、最先端の製造技術を持つのは超巨大工場「ギガファブ」のみとなりつつある。高騰する最先端工場への投資額に対応できるのは、台湾TSMC、アメリカ・インテル、サムスンの3強に加え、アメリカ・グローバルファウンドリーズ程度。20年後には3強のみとの予測も。製造を外部委託する企業の道は「ファブライト」と呼ばれる事業モデルで、設計、商品企画、販売に注力するもので、テキサスインスツルメント等は対応済み。日本企業も製品の提案力やシステム構築力の強化にかじを切り始めている。

2010年10月15日金曜日

水ビジネスに対応した新しい水質センサの開発

2010.10 海外技術動向
http://www.kansascity.com/2010/10/15/2317017/research-and-markets-water-quality.html
 水をめぐって現代の世界には様々問題が現れている。水不足、水テロ、環境汚染問題等である。そのために新しい水質センシング技術の開発が求められている。水の値段が上がるにつれて、地球規模での水の危機管理が叫ばれている。水関連企業は既に水処理プラントの展開を始めており、その場合、配水経路毎にリアルタイムでの水質モニターを設置する必要がある。
 様々な分野のセンシング技術の発展は目覚しいものがあるが、こと水質センサに関しては蚊帳の外である。しかしながら最近になって水質センサの技術の開発の動きが、水処理企業や水消費企業において活発になってきた。これはMEMSデバイス技術、ラボオンチップ技術の発展が、水処理や水質センサを最新テクノロジー開発の舞台に引き上げた。
 これまでの水質分析は、サンプリングした水を分析室に送り、分析装置を用いていたため長い時間と高いコストが必要であった。しかしMEMS技術を用いることによって、これをリアルタイムで迅速に水質分析することが可能になる。ただしこれを実用化するためには、飲料水、工業水どちらにおいても信頼性が必要となる。現在開発者は、水に対する安定性、小型、マルチセンシングを備える水質センサの開発に取り組んでおり、徐々に成果が現れている。
 このような新しい技術開発は、こまでの水質分析システムやそれを扱う企業と競合状態に陥るだろう。彼らは現在すべてのシェアを握っており、新たに開発された新概念のセンサに対して抵抗を示すと考えられる。しかし水質センサの開発は進めなければならない。新しいセンシングテクノロジーのインパクトは大きく、水の管理における法制改正や価格に大きな影響を与えることになるであろう。
 現在、進展している例として韓国のソウルでの開発状況を紹介する。新規に開発された水質センサを配水経路に設置してすべてリアルタイムでモニターを行っている。得られたデータはオンラインで解析される。韓国でこのように発展した背景として隣国の脅威の影響も考えられる。商用的に成功するための要因としては、低エネルギー消費と環境にやさしいことがあげられる。現在の技術開発が進展すれば、これらの課題をクリアすること可能であろう。

最近のMEMS産業動向

2010.10 海外産業動向
http://www.micromanufacturing.com/showthread.php?p=1032
 MEMS市場は2010年、不況から立ち直りそうである。Yoleの予測では2010年の市場は$8B(約7千億円)、2015年には$16.4B、年成長率15%が見込まれている。一方iSuppliの予測は2010年$6B、2014年$10B、2020年$20B、年成長率11.6%としている。この二つの予測を比較すると2015年で$5.5Bもの差が生じている。この原因は、iSuppliが対象をシリコンMEMSに限っているからである。
 iSuppliによると、高機能MEMSの伸びが大きくなると予想され、アプリケーションは産業機器、ビルオートメーション、エナジーハーベスティング、燃料電池、医療機器、軍事用、航空機、ワイヤレス機器等が有望視されている。高機能MEMSの市場は2014年まで年率19.7%が期待されている。中でもビルオートメーション、半導体製造装置が大きく伸びると予想され、オムロンがこれを証明するであろう。
MEMS第3の波
 Analog Devices社の副社長Martinは今年の初めに、慣性力MEMSセンサを代表とする高機能品市場は第3の波を迎えるであろうと予想した。第1の波は1990年代の車載用センサで、第2の波は2000年代のゲーム等民生機器用センサである。第3の波は、高機能、高価格品へのニーズが高まり、アプリとして産業機器、自動工程モニタ、携帯医療器具、ナビゲーションシステム向けのニーズが増加するであろう。
 高機能型モーションセンサの需要が広がる見込みである。2011年の予測では、車載用の高機能型の市場は減少するが、民生機器用は増加し、分野別ではNo.1になりそうである。MIGのKaren Lightmanは高機能型の構成としてオール in 1パッケージをあげている。複数のMEMSとICが1パッケージ化され、チップ間の通信もその中で行なわれる。代表例が加速度、ジャイロ、電子コンパス、回路を1パッケージ化したモーションセンサである。
 またDixon-Warrengも今後のMEMSは単機能から多機能へ、さらにネットワークに繋がる機能も重要になると予測している。HPのHartwellは、これからはセンサネットワークが重要になると言っている。食料管理、建築物モニター、スマートビルディング、生体モニター、エネルギー管理、自動車、交通システム、倉庫管理、モバイル機器等枚挙にいとまがない。
 Freescale社は多機能集積型センサと一体化される制御回路チップに関する特許を積極的に出している。同社の集積型モーションセンサは、スマートフォン、医療機器、ナビゲーションシステム等で評判が高い。
MEMSにファブレス時代がやってきた
 MEMS全体の売上におけるファブレスメーカのシェアは急増しており、現在は33%に至っている。Lightmanによると、新製品を市場に出すまでのスピードはファブレスが早く、しかもコスト競争力も強い。しかもここ数年TSMCのように能力の高いMEMSファンドリーが増えている。SVTCのように中規模の量産受託やアイデア段階から共同で開発する企業も出ている。SVTCによると、現在なおMEMSプロセスはカスタマイズされたものが多いが、各工程を標準化できれば、さらにスピードアップと低コストが図れる。今後MEMSメーカとファンドリーによって工程の標準化が進めば、さらにファブレス方式のビジネスが盛んになると予想される。

2010年10月14日木曜日

センサー技術、センサー最近の研究成果

20101014 電波新聞 14

 NEDO Fine-MEMSプロジェクトの成果を活用したマイクロミラーと、真空封止による熱絶縁構造を用いて、高感度の非接触温度センサー素子をオムロンが開発した。赤外線を効率よく集光するためシリコンウエハー上にマイクロミラーを形成した。この素子をアレイ化することにより、広い空間でも人のセンシングが可能となる。

センサー、高精度化など新製品開発加速

20101014 電波新聞 9

 各種センサー開発の加工技術でMEMS技術が注目されている。加速度センサーやジャイロセンサーの携帯機器への搭載が定着しており、圧力センサーやフォースセンサーにも展開している。使用されるウエハーもシリコンに加え、高精度を求め水晶を素材とするケースが増えてきた。

360度方向の風量計測、エアコン用センサーユニット(オムロン)

20101014 日刊工業新聞 8

 温度、湿度、風速を同一箇所で観測し、無線通信するMEMSフローセンサーユニットをオムロンが開発した。センサー素子上に風が流れることで発生する温度差を、風速と風量に変換する気流センサーを2軸設置し、360度方向計測できる。ユニットにMEMS気流センサー、温度、湿度センサー、無線機能を組み込み、ユニットを置いた場所の最適制御を行うエアコンを想定している。

2010年10月8日金曜日

光源に使用、DLPリアプロシステム(ヨネイ)

20101008 日刊工業新聞 9

 ヨネイ(東京都中央区)はベルギーのバルコ製で、光源にLEDを使ったDLP(デジタル・ライト・プロセッシング)リアプロジェクションシステムを発売した。光源の寿命を55000時間以上とし、メンテナンスの負担が少ない。道路や鉄道などの監視業務を見込んでいる。

テルアビブ大学:光式ナノジャイロスコープ開発

2010.10 海外技術動向
http://www.gizmag.com/nano-gyroscope/16581/
 テルアビブ大学は、ピンの先端に装着できるほど極小サイズの光式ナノジャイロスコープを開発した。
 旧来の機械式ジャイロスコープは回転機構を備え、船舶、航空機のナビで用いられているように非常に高精度だが、15-20cmとサイズが大きいという欠点があった。iPhone4はMEMSジャイロスコープを搭載した最初のスマートフォンとして知られている。ジャイロの他に加速度、近接センサ、外光センサも含まれている。ジャイロと加速度の組合せはゲーム機Wiiのように6軸を活用してきめ細かな動きを検出することができる。iPhone4の3軸MEMSジャイロは振動式ジャイロでナビゲーションシステムにも幅広く用いられている。このように現行の小型ジャイロはMEMS式だが、開発中の光式ジャイロは、ピンの先端に装着できるほどの極小サイズでかつ、MEMS式より高精度な動きの検出を可能にする。
 テルアビブ大学の研究者は、イスラエル防衛省のサポートでMEMSジャイロを上回る極小サイズと高精度を兼ね備える半導体レーザジャイロスコープを開発した。原理は半導体レーザの光の強度と波長が、回転力によって変化することを活用している。ここで用いられるレーザの直径はわずか数十ミクロンである。ジャイロセンサとしてのチップサイズも1mm×1mmで信号処理ICチップの上に容易に積層可能である。
 このデバイスのアプリケーションの見通しを次に述べる。まず現行MEMSジャイロと同様、スマートフォンとゲーム機、GPSナビゲーションでさらなる小型化が可能になる。特に持ち主の正確な位置までGPSで割り出せるようになる。また極小サイズとういう特徴を生かすと、医療機器への応用が考えられる。例えば内視鏡の先端に装着して動きを制御する。人体埋め込みチップにも装着可能である。テルアビブ大学の研究者は、現在はまだ実験中で、2-3年で検証は完了すると言っている。

ISSYS社:MEMSデバイス・システム生産ライン拡張

2010.10 海外産業動向
http://www.azonano.com/news.asp?newsID=19886
 Integrated Sensing Systems, Inc.(ISSYS)はマイクロフルイディクスを得意とするベンチャーで、2010年のMEMS生産ラインの拡張を完了し、工場設備面積は5,400平方フィートになったと発表した。
 拡張は、システムレベル(モジュール)のラインの生産能力拡張と高品質化を狙ったもので、パッケージング、検査工程まで含む。デバイスとしては医療機器、産業機器を対象としている。例えば無線式人体埋め込みデバイスの生産量は、年間1万ユニットの能力を有する。ISSYSのCEOであるNader Najafiは次のように言っている。ISSYSのMEMS生産ラインは月産数千チップにまで高めることができた。これらのチップは心臓や脳に埋め込む医療機器や燃料電池用センサ(メタノールセンサ、流量サンサ等)の販売拡大に寄与するであろう。また副社長のDoug Sparksは、MEMSを応用した微小量液の密度センサやコリオリ式流量センサの増産計画が完了した。また最近燃料電池用の成分センサやMEMS流量計の販売が伸びており、今後の燃料電池の伸びに伴って大きな市場が期待できると言っている。

mPhase Technologies社:MEMSを応用したスマート電池開発

2010.10 海外技術動向
http://www.rdmag.com/News/Feeds/2010/10/information-tech-mphase-smart-nanobattery-featured-in-september-201/
 mPhase Technologies Inc.はMEMSとナノテクを応用したスマート表面技術で注目されている会社である。デバイスとしてドラッグデリバリ、マイクロ分析システム、化学センサ、防汚表面などマイクロフルイディクス(microfluidics)を中心としたデバイスを開発している。
 今回mPhaseは同社の技術を生かして、スマートナノ電池を開発した。この新しい電池に用いられている要素技術は、ポーラスSiメンブレンとmicrofluidicsから成り、20年以上の電池寿命を実現している。電解質溶液がSiメンブレン界面を通して移動する量をmicrofluidicsによりコントロールしている。最初電解質溶液は、固体電極に対して分離されているが、microfluidicsで電解質溶液が一定量、Siメンブレンを通って固体電極に到達した時から電池としての機能を発揮する。電解質溶液の移動量のコントロールが高い性能を生み出しており、ワイヤレス機器等の電池の交換を不要にする画期的な技術である。U.S,Armyの補助のもとでプロトタイプはすでに開発済である。mPhaseのCEOであるRon Durandoは、このデバイスは軍用の他、まず人体埋め込み型の医療機器に応用可能と言っている。さらに将来はドラッグデリバリや血糖モニタにも応用可能になるだろうとも言っている。

2010年10月7日木曜日

小型・高信頼性ジャイロセンサー

20101007 電波新聞 14-15

 エプソントヨコムはジャイロセンサー(角速度センサー)を開発している。物体の直線運動の速度変化を計測する加速度センサーに対し、ジャイロセンサーは回転運動の角速度を計測する。6(加速度3軸+ジャイロ3)で計測することにより物体の3次元の動きを捉えられる。ジャイロセンサーはデジカメの手振れ防止、カーナビの推測航法、ゲームのリモコン等に用いられているが、同社は世界で搭載義務付けが進んでいる自動車の横滑り防止装置に注目している。同社の水晶による振動ジャイロセンサーは、センサー素子のもつ低振動感度、低衝撃感度特性に加え、内臓ローパスフィルターの最適設計により、異常出力の抑制を実現している。

MEMSマイクロホン、小型で携帯端末向き、先行米社を日本勢追撃

20101007 日経産業新聞 4

 小型で、湿度や温度変化に強く、表面実装等で基板に取り付けやすいMEMSマイクロホンが注目されている。音の振動を捉える振動膜にMEMS技術で微細加工を施したシリコン素子を使うマイクで、スマートホンやデジカメで採用されている。現状ではアメリカのノウルズ・エレクトロニクスが世界シェアの8割以上を占めているが、新規参入が相次いでいる。ホシデン、TDKSTマイクロエレクトロニクス等が参入している。

常温で電子部品実装、金属接合技術を開発(アドバンストシステムズ)

20101007 日刊工業新聞 9

 アドバンスシステムズジャパン(東京都三鷹市)は、横浜国立大学の八高隆雄教授と共同で、常温で電子部品を実装できる金属接合技術を開発した。プローブをプリント基板の金メッキ電極に押し付けた状態で20ヘルツの振動を加えて摩擦拡散接合させる。プローブは二重らせんのバネ構造となっており、引っ張ると接合部分がねじれてせん断される。現在プローブをMEMS技術で作成しており、これをプレスで製造して単価を引き下げる。

MEMS製造ライン本稼働(日本電子材料)

20101007 日刊工業新聞 8

 半導体検査用プローブカード製造大手の日本電子材料は、兵庫県尼崎市のMEMS製造ラインを完成し、本格稼働を始めた。同社は、近年、MEMS技術を応用した製品を開発し、国内外の半導体メーカーに売り込んでいる。

2010年10月6日水曜日

傾き計測、誤差1/8、小型化、カーナビに搭載(エプソントヨコム)

20101006 日経産業新聞 5

 傾きを計測する「慣性計測ユニット」の開発サンプルを20114月に出荷するとエプソントヨコムが発表した。3軸角速度センサーと3軸加速度センサーを一つの部品とし、2x3x4㎝程度の大きさとして小型化し、カーナビなどに搭載可能とした。GPSで検知できないトンネルなどでも車体の向きや傾きから自動車の動きを割り出すことができる。

2010年10月5日火曜日

MEMS非接触温度センサー(オムロン)

20101005 日刊工業新聞 11

 MEMS技術を使用した高感度の非接触温度センサーをオムロンが完成した。赤外線を効率よく集光できるマイクロミラーをシリコンウエハー上に形成し、応答速度3ミリ秒で感度を約7倍に高めた。広い空間を計測でき、空調制御や防犯への活用が見込まれる。

MEMSシャッタ方式カラーFPD、量産試作品を開発(日立ディスプレイズ)

20101005 電波新聞 1

 MEMSによるシャッタを高速開閉し、赤緑青のLED光を制御する、薄型カラーディスプレーの量産試作品を開発したと日立ディスプレイズが発表した。新パネルはアメリカ・ピクストロニクス社との共同開発。液晶パネルに使われる偏光フィルム、カラーフィルター、液晶、バックライトも不要で、光利用効率は60%以上という。

体内埋め込み型センサー、血糖値高いと発光(東大など)

20101005 日経産業新聞 11

 糖尿病患者の血糖値センサーとして期待される、体内埋め込み型センサーを東京大学生産技術研究所の竹内昌治准教授とテルモなどの研究チームが開発した。高分子化合物のポリアクリルアミドの中に蛍光物質を混ぜ込んだ特殊な材料を作り、直径0.1㎜のゲル状のビーズにして体内に注射する。この材質はブドウ糖と結合しやすく、紫外線を当てると青緑色に発色する。ネズミの耳に注射した実験では濃度に応じて光は強くなる事が確認できた。510年以内の実用化を目指す。

2010年10月4日月曜日

小型IMUに参入、角度検出性能8倍(エプソントヨコム)

20101004 日刊工業新聞 8面
3軸の角速度と3方向の加速度からなる慣性運動量を検出するIMU(慣性計測ユニット)にエプソントヨコムが参入する。同社は水晶にMEMS技術を応用したQMEMSにより、小型化と安定性を実現した。高精度のIMUはこれまで軍事向けで民生用には使いにくかった。民生機器の動作解析や制御、移動体制御、振動制御・安定化などの需要を見込む。

2010年10月1日金曜日

アナログデバイス社(ADI):高性能MEMSジャイロセンサ発売

2010.10 海外産業動向
http://www.i-micronews.com/lectureArticle.asp?id=5531
 アナログデバイス社(ADI)、高性能MEMS静電ジャイロセンサ(ADXRS453)を発売。感度を0.01°/sec/gまで高め、さらに衝撃や振動の影響を排除。
 ADIは第4世代高性能MEMSジャイロセンサシリーズに、さらに高感度、高精度型のデジタル出力ジャイロセンサを加えた。特徴は衝撃や振動の加わる過酷な環境であっても、高精度な検出を可能にしていることである。検出感度は0.01°/sec/g、振動矯正をわずか0.0002°/sec/g、ノイズレベル0.023°/sec/√Hz、消費電流 6mAという性能を誇る。パッケージはSOICプラスチックパッケージとSMT標準型を用意、動作電圧は3.3-5V、使用温度範囲は-40~125℃で産業機器や防衛機器に適している。
 マネジャのKelly Atkinsonは言う。”ADIが進めるQuad-Sensor™シリーズは、衝撃、振動の誤差要因を排除する性能に優れるため、軍用の自動車、航空機、船舶で用いられるGPSのように過酷な環境であっても高精度を確保できる。MEMSジャイロセンサでここまでの感度を備えるものはこれまでに無い。”ADXRS453は角速度最大±300°/secまで測定可能で、出力は16-bit又は32-bitでデジタル出力される。2010年12月にサンプル出荷の予定。サンプル価格は1000個購入時、SOICタイプ$48.24、SMTタイプ$62.29である。

Freedonia Group, Inc. :米国センサ市場予測(~2014年)

2010.10 海外産業動向
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=40212
 米国のセンサ市場は年率6.1%の成長が予測され、2014年の市場規模はBillion$13.1に達する見込みである。2009年の市場は減少したが、今後は期待できる。内訳は、まず自動車が不況の反動で大幅に増産される見込みである。特にタイヤ空気圧センサ、乗員の位置センサの需要が急増するであろう。センサ市場成長の要因として、設計・製造技術の革新があり、特にMEMS技術と光エレクトロニクス技術の進歩が主要因となっている。米国では自動車産業が最大のセンサユーザである。2009年は不況の影響で落ち込んだが、2014年に向けての自動車用センサ市場は、年率14%の伸びで、2014年の市場規模はB$3.9に拡大の見通しである。
 また産業機器用センサ、医療用センサも伸びる見通しで、年率4%の成長が見込まれる。特に注目されるのは近接センサ、ポジションセンサで自動車製造装置の伸びとともに、これらのセンサの伸びが期待できる。新しい自動車用センサ応用システムとして自動走行安定装置や次世代エアバッグがあり、これらに搭載されるセンサも伸びるであろう。
 他に化学物質センサが伸びる見込みである。これはセンシング性能の向上の他に製造技術の開発が進み、小型、低コストを達成することができたからである。一方、センサ市場の多くを占める圧力、温度、流量センサ等は市場が成熟しており、横ばいの見通しである。

West Australia大学:食べ物の新鮮度を検出するMEMS赤外線画像センサ

2010.10 海外技術動向
http://www.theaustralian.com.au/australian-it/scientists-set-sights-on-cutting-food-wastage/story-e6frgakx-1225930192551
West Australia大学:軍用の赤外線画像センサ技術を食べ物の新鮮度検出技術に応用。

 赤外線画像(波長画像)センシング技術は、当初米国防衛省の出資で、UWAマイクロエレクトロニクス研究Grがミサイルの弾道検出用に開発した。この時別の投資機関からWest Australia大学に農業や食物製造プロセスへの応用を目的に、同類の技術を用いて土壌成分検出や蛋白質の検出技術の開発を委託していた。もし食べ物の新鮮度(腐敗度)をセンシングできれば、あらかじめ賞味期間を表示する必要がなくなるし、食べ物の廃棄を少なくすることができる。メカニズムとして食肉が腐った場合、発する赤外線の波長が変化することが知られている。これはバクテリアの密度が変化することに起因している。
 このように新鮮度を検出できる赤外線画像センサを小型化してバーコードスキャナーに組み込むことができれば、例えばスーパーの店員は、価格、数量とともに品質の管理もできる。同類のセンサを備える装置で最近日本でリンゴの甘さを検出できる機械が開発され、スーパーマーケット向けに販売された。しかしこれは大型の設備で高価である。同研究Grは現在MEMS技術を用いて小型の赤外線画像センサを開発中で、2、3年以内には果物、肉等食べ物の新鮮度を検出できる小型センサを開発できる見通しとのことである。